読書ノート・ロードサイド⇒レールサイド

松岡真宏+中林恵一
★20年前:百貨店のバイヤーが高級ブランドの水先案内人、キュレーターだった
★ブランド店側:まだ日本市場を知らなかったので、いきなり路面店を出すリスクは取れなかった
 ⇒百貨店内出店へ
★20年前:消費者の高級ブランド志向、ロードサイド化に小売側も適切に対応
★20年前の小売:ある意味、欧米を模倣すればよかった。
 今は欧米模倣できない。(レールサイド化は日本だけ)
★20年前は百貨店は就職ランキング上位だった
★イオン:「狸のあるところに店舗作れ」
★マイカル:シネコン誘致の元祖、「時間消費」の概念を生み出す
★百貨店の月坪売上:もはや1974時点まで後退
 一方で人件費や家賃は増加、当然利益出ず
GMS:1997まで生産性拡大
 売り場面積増大による非効率化を、POS化で食い止め
 かつてのGMS:価格打ち込みの「職人」がレジ打ち(=給与高い)
 今やPOS化でパートでもレジ打てる
★表向きの小売不振原因=バブル崩壊、消費税導入・・・本当か?
大店法:零細小売のみでなく、既進出の大型店も保護する結果に(例:NEBA家電量販店)
★1990年代のオーバーストア:低金利により出店ハードルが下がったため、合成の誤謬発生
★この20年間に、日本人の衣料支出は「半減」。
 婦人用着物は80%減、背広は60%減、ワイシャツ50%減
 他方カジュアル系衣料は増加
★数量ベースでは日本人の衣服購入「量」は増えている
 7.13着/年⇒7.62着/年
 要はカジュアル系衣料購入にシフトしている&単価下落
★衣料単価下落要因
 ・ロードサイド紳士服チェーン成長
 ・↑が駅前店出店(スーツカンパニーなど)
 ・ユニクロ
 ・ファストファッション増加
 ・各ブランドがセカンドライン展開
 ・アウトレット店
★家具売上減少
 箪笥など、「2人以上世帯向け家具」が大幅減
★衣料品消費割合:イタリアが高く日米が低い
 イタリア=7.6%、日本=3.5%
★日本=先進国では異様にエンゲル係数高い。
 が、外食費比率は低い
★家計消費における医療費比率が最も低いイギリス
 (=保険が充実)
 勿論最も高いのはアメリ
★家計消費における教育費比率が異常に高い韓国
★世帯主が50代前半の時が最も支出が多い
★単身世帯比率:日本(30%)は世界的には高いわけでない。
 ノルウェーなどは40%
 (欧米はパラサイトシングルが少ないから?)
★高所得層ほどフォーマル衣料購入
 「衣料のカジュアル化」とは、高所得層の減少、ということ
★百貨店:「自分の強みは衣料」として、衣料特化戦略
 家電や家具売り場を切り捨て、「五十貨店」に。
 当時の流通ジャーナリストもそれを支持
 自ら嬉々として「市場が半減する市場」へ絞り込みを行った
★五十貨店戦略:アメリカの猿真似
 アメリカは「買い取り制」(返品しない)からバイイングパワー維持のために
 衣料特化・衣料のバイイングパワー強化が意味あった
アメリカ:百貨店といえども、取り扱い品目数は日本の10分の1
 ⇒少品種多量仕入れが可能
 最大手メイシーズ:店舗網800店舗
 店舗数×取扱い品目の少なさ×買い取り制、これでないとバイイングパワーの効果出ない
アメリカ:買い取り制のため、在庫一掃のため、百貨店傍系のアウトレット店がある
★欧州:百貨店が小売他業態も展開(コングロマリット経営、独メトロなど)
 小売への法的規制が厳しい故?
GMS:衣料部門の落ち込みは百貨店以上に悲惨
 ただ、食品部門が「健闘」しているので、あまり目立たない
GMS:1階食品、2階衣料&靴、3階家電雑貨等
 ⇒3階、2階の順でシェア落とす
 3階部門>家電量販店、ホームセンター、スポーツ専門店
 2階部門>ユニクロABCマート
★紳士服チェーン成長の2因
 ?資本市場からの資金調達
 ?回転差資金(仕入先への支払いは5ヶ月後でいい)
★1階部分の対抗馬:食品スーパー、ドラッグストア
 地方におけるドラッグストアの勢いはすごい
GMSの1階:平日と休日の客数ギャップが問題となる。
 平日用に1階を最適化すると、休日が×
 休日用に1階を最適化すると、平日が×
 食品スーパーはそのような問題は少ない
★ドラッグストアのビジネスモデル
 採算無視の目玉商品(ロスリーダー)で集客し、粗利率の高い医薬品を買わせる
 ・・・目玉商品にGMSがまともに対抗すると、利益低下
★百貨店の「競争力の源泉」
 ・・・バイヤーの目利きと、百貨店という「ハレの場」
 「場の力」は、人口都心回帰で、今後むしろ高まる(悲観することない)
★バイヤーの目利き力、消費者との情報非対称性
 ⇒消費者自らネットサーフィン、ブランド自らが情報発信⇒ヒトの力が無価値化
★デパ地下:百貨店はあくまで場所貸しに徹する
 ⇒場の力で活況
★以前は、「海外のブランドだからヒット」する確率は80%程度あった。
 ⇒確実性の世界(正規分布的な確率論の世界)
 今や、「ブランドだからと言ってヒットするとは限らない」(不確実性の世界)
 よく言えばアートの世界、悪く言えばギャンブルの世界
 ⇒装置産業である百貨店が、そこまで首を突っ込むのはリスキー
 テナント貸し化させるのが正解
★テレビ局や出版社:制作会社や作家を「外部化」、自らはプロデューサーになる
 百貨店もこれに習うべき
★パルコ、OPA、東神開発、そしてJR東が「名プロデューサー」
★韓国百貨店:「場所貸し」に特化
★赤字店が閉鎖されない別の理由:「20年間の賃貸借、解約時に違約金」
 つまり赤字垂れ流しに経済合理性がある
 (従業員の閉店退職金割増も経済合理性あり)
★赤字店存続の「合成の誤謬」でオーバーストア
 GMSの1割程度が「本来赤字閉鎖すべき店」?
★日本の失業率が「あまり上がらない」別の要因:
 本来赤字な小売セクターが「雇用を吸収してくれている」から?
★赤字店の閉鎖へ「政策誘導」できないか?
 店舗維持コストを政策的に上げる
 ・耐震化義務付け
 ・バリアフリー化義務付け
 ・最低賃金引き上げ
 あるいは「店舗閉鎖費用」へのファンド組成など
GMSによる専門店進出:失敗が多い
 ダイエーのロベリア、ロベルトなど⇒ダイエー本体の余剰人員受皿会社化する
 そもそもユニクロのような川上〜川下一気通貫にしないと、意味がない
GMS専門店唯一の成功例:良品計画
GMS人事:各部門横並び
 ⇒非効率分野(衣料)にも各店担当者置かざるを得ず、合理化できない
 売場の合理的見直しが出来ない
GMSがバイイングパワーを発揮できる分野が限られる
 又、バイヤーの力(ヒトの力)が専門店より脆弱
GMS:テナント業への全面転換には踏み切れない
 中途半端な「専門店街とのミックス」になる
 (従業員の雇用問題を先鋭化させたくない)
 親会社傍系の専門店を誘致して、人件費水準だけ下げて出店
オーバーストア化により、テナント家賃は下落傾向
 ⇒家賃維持するために、傍系専門店に無理やり入居させるケースも
 (連結で見ると全く意味がない)
★1960年代:レールサイド専門店
 第一家電、鈴屋、タカキュー、新星堂、ワシントン靴店
 郊外駅の駅ビル、バスセンター、あるいはGMS内部に立地
★食品スーパー:当初はGMSに多店舗化に遅れを取る
 ・鮮度維持の投資が嵩んだ
 ・生鮮食品を扱う人材育成に時間取られる
★コンビニ:GMSの「大店法対策多角化事業」
 唯一成功した多角化
★第一世代専門店:市場退出
 鈴屋=和議申請、タカキュー=イオン傘下入り
 専門店の方が「新陳代謝」が早い
 タカキュー:遅ればせでロードサイド進出しようにも、好立地は既にライバルに押さえられた
★青山:全量買い取りを前提にマージンや加工賃の引き下げ迫る
 資本市場からの資金調達で、全量買い取りや新規出店の原資とする
★90年代=大店法緩和+低金利+地価下落=出店ラッシュ
 気が付けばオーバーストア
 紳士服業界=80年代は地域不可侵、90年代は全国展開(戦国化)
★90年代後半から専門店同士の「体力勝負」が増える
 (ガチンコ勝負、利益率悪化、他方が閉店するまでのチキンレース
 ※本来、GMSでも70年代に見られていたはずだが、
  80年代の大店法チキンレースが緩和した
★アオキ:ブライダル事業やネットカフェへ多角化して生き残り
 さらに不採算店は100円ショップ化
★コンセプト展開:100円ショップ、無印良品
★ドラッグストアの好調:高齢化で医療セクター自身が「成長市場」であることが背景
★専門店なのにシェアを落としている業態もある
 ?カー用品:オートバックス等のシェアダウン
  カーディーラーやホームセンターに市場を崩されている
 ?書籍:コンビニ等に崩される
眼鏡市場:紳士服市場を数年遅れで追いかけている
ユニクロ:少種多生産、しまむら:多種小生産
 ユニクロ:店舗分権、しまむら:中央集権
 ユニクロ:配送外注、しまむら:自社配送
★日本:食品小売の寡占度合が低い
 (大手5社シェア25%程度、ヨーロッパは70%)
 ・・・食の地域性が強い
 各エリアエリアでは寡占する食品スーパーが存在するが、全国統計ではそれが見えなくなる
 例:滋賀や和歌山では「スーパー上位5社でシェア70%程度」
 ⇒しかし平和堂やオークワも、滋賀や和歌山を出ればシェアゼロに近い
 ⇒全国シェア集計で日本とヨーロッパで大差
★総合商社による卸再編が、食品スーパー同士の再編を産む?
★日本的CVS:酒屋をフランチャイズとして利用
 アメリカの元祖CVSにない手法、そのため日本のCVSは売り場面積狭い
★ドラッグストアチェーン:大手寡占化が遅れている
★ホームセンター業界:家電量販店の5年遅れ
★ホームセンター:「DIY園芸型」と「バラエティ型」に
 DIY園芸型=ジョイフル本田アークランドサカモトコメリ
 バラエティ型=ホーマック、カーマ、コーナン、カインズ
DIY園芸型・・・商品の回転が遅い(在庫多い)、プロ向けショップ
 ジョイフル本田アークランドサカモト=大店舗(店舗数少)
 コメリ=小店舗(店舗数大)
 工務店や農協の調達ルートに侵食
★バラエティ型=資金効率がいい、逆に言うと参入インセンティブ強い
 ⇒同業種間M&Aや、異業種からの蚕食進みやすい
★ホームセンター界:川上が零細
 家電量販店みたく「川上がメガ企業」でない
★ホームセンター:家電みたいな「技術革新による新製品」はまず期待できない
★ホームセンター界のレールサイダー:東急ハンズ
★ドラッグストア:医薬化粧品は「粗利は高いが回転が悪い」
 食品等は「粗利は低いが回転がいい」
 都市内ドラッグストア:面積的制約で食品等は最小限にならざるを得ない
★家電:ヤマダ電機ディスカウンターダイクマ」買収
 ⇒ドラッグストアもディスカウンター買収へ
 (多品目化・店舗数拡大の近道)
 ※ヤマダ:ダイクマ買収で「ブランド品」の仕入れルート手に入れる
★ドラッグストア:コンビニ売り場面積を追い抜く
 そろそろ飽和?
★カー用品:オートバックスイエローハットの2強対決へ
★家具:ニトリ独走
 小商圏開拓と海外進出が課題
★ポイント制度:デジタル家電(=レールサイド量販店)に親和
 白物家電に馴染まない(買い替えサイクルが長い)
★レールサイド:街同士の競争
 「新宿が池袋より魅力的でないと、ヨドバシが泣く」
★結局、地域一番店が強いのか?
 となると、ヤマダは新宿や大阪で一番店を取れていない
★レールサイド家電=LABI+ヨドバシ+ビック=2兆円
 まだまだ伸びる余地あり?
★高度経済成長期の人口移動の主因=製造業
★実は高度成長以前では、東京圏と大阪圏で製造業シェア大差なし
 ⇒高度成長へ一気に差が付いた
★高度成長期に東京が製造業で伸びた理由=軍需産業の名残で機械産業が急伸
 (大阪は繊維産業主体なので伸び悩み)
★大阪:繊維の小工場が立地していたことが、かえって足かせに
 (用地少、賃金高)
★工場等制限法
 京浜地区⇒千葉埼玉への進出
 阪神地区⇒名古屋圏への進出
 工場等制限法が、首都圏では拡大阻止要因にならなかったが、阪神圏では拡大阻止要因になった
★東京圏:4,000万人までの人口集中が可能?
 (集中デメリットを最小化する仕組み)
 東京圏の中でも、人口都心回帰傾向進む
★東京都=工場30%減
 「脱第二次産業化」が加速
 跡地にマンション、都市の高度化
★意外なことに、最近まで東京圏の小売シェアはあまり伸びていなかった
 ⇒この数年でシェア伸びだす
 というか地方が失速
 ・製造業の海外移転
 ・公共事業減少
★DID面積:初の減少
 コンパクトシティ化が確認される
 つまりロードサイドビジネスの終焉
★東京都心4区の昼間人口=319万人
 マンハッタン(面積は4区に近似)の昼間人口=287万人
★夜間人口 東京都心=63万人、マンハッタン=154万人
 つまり、通勤人口(流入人口)は東京はマンハッタンの倍
 つまり、東京はマンハッタンより2倍は高度化された輸送網が必要
★マンハッタン=自家用車通勤30%(名古屋並み)
 東京はわずか9%
★道路率=東京22%、マンハッタン29%
 都市面積の7%分を、東京は宅地やオフィスに余分に使える
★ニューヨーク・ペンシルバニア駅=乗降客数わずか60万人
 名古屋駅の半分程度
★JR発足後に入社した「JR1期生社員」が中堅に
 ⇒エキナカなどの自由な発想が開花
★JR東:非鉄道部門が連結利益の30%占める(1,000億円)
 三井不(1,200億円)やイオン(1,300億円)と大差なし
★JR西:伊勢丹開業と同時に、高槻止まり列車を京都延伸
GMSと商社が提携していた時代
 ・・・IT化や閉店費用等を商社に求めていた面も
新興国:首都と他都市で発展に差
 ⇒最初首都に出店し、その後地方に展開する、という重層展開が可能
新興国の「政治的不安定」
 ・・・実は60〜70年代日本の社会不安と大差なし
 それを理由に海外進出を躊躇する理由にならない
新興国:人口ボーナス期に入っていることも魅力
★「鉄道系百貨店」というビジネスモデル:欧米にはない
 日本だけがこのビジネスモデルを「輸出」できる