上流階級のアイコンなハードカバー本は書斎とともに消滅する

11月19日
そもそもロマンスカーは下北止まらないし/装丁を気にしない人が増え、「見てくれより、安さが一番」な人が増えてるなら、文庫本形式ですらなく、タブロイド新聞形式で「出版」したら、もっと安くなる? / “「単行本と文庫本の関係は特急と普…” http://htn.to/iYuTGohkZ8N

11月20日
業界の思い込みエントリ。ハードカバーの装丁を負担と思う読書厨は少なくない。「3000円の文庫」も、出してみたらハードカバーより売れる可能性も。まず思い込みを止めよう / “なぜ最初から文庫本で出さないのか?” http://htn.to/6uf3wh

ハードカバーの装丁云々は、「読書厨が、豪邸の名家にしか居なかった、昭和40年代迄の文化」の名残だよね。その頃までは、「本読み」は、立派な家を構えられ、書斎も完備した上流有閑階級の特権だった

昭和40年代以前だと、「長屋住まい」「狭い家住まい」な人は、殆どが「学歴も、読書欲も少ない人」で、「ハードカバーの本を、そもそも大量に買う経済力も、意欲も、無かった」。だから、その頃の出版界は、上流家持ち有閑階級だけを相手にしてたから、書籍を無意味なまでに立派にしてた

昭和40年代の上流有閑階級の書斎だと、本棚そのものが、客に対して「見せる本棚」であることが求められてた。自身の経済力と教養を、本棚で以て客人に可視化していた/その為には、「書棚が映える、ハードカバー」の方が、都合良かった。部長がカローラじゃなくクラウン買ってたのと、同じ理屈

つまり、昭和40年代までは、書棚は「単なる文字の集合体」な役割だけじゃなく、「自身の経済力と教養を誇示するアイコン」の役割をも担っていた。それが「装丁文化」であり、感覚としては、「美術品の文化、遊びの文化」

それが高度経済成長で、あるいは大学教育の普及で、「家が狭いくせに、本が大好き」という、出版業界が想定していない客層が出現することになった。そういう客も、ハードカバーを買ってくれるから、売り上げ上がって出版社はウハウハだったが、客層の変化に合わせて装丁文化を変えることを、怠った

以前連ツイした「日本の住宅から、いつ応接間が消えたのか?」問題に通じる。応接間には、客に対して自身の教養と経済力を誇示するハードカバー書籍が必要だったが、そもそも応接間が無くなったのだから、ハードカバーも不要になった

名家の本棚だと、並んでいるのは「ハードカバーな本」「世界文学全集」「百科事典」じゃなくちゃ。折角の本棚に並んでるのが「文庫」だったら、「恥ずかしい」な感覚が、年号が昭和な時代には、上流階級には存在してた

間違っても、名家の本棚には、ラノベとか同人誌は、並んではいけない

「出版社が、自社に文庫シリーズを抱えているか、どうか」も、文庫を出せるか出せないかの、重要なファクターだと思う。文庫を出してるのは、事実上大手出版社だけだから、大手以外の出版社でハードカバー出してしまったら、いくら売れていても、文庫化は難しい

読書の場所も変わったよね。有閑階級がゆったりと自宅で優雅に読書する分には、ハードカバーがサマになった/社畜が満員電車の暇つぶしに読書するには、ハードカバーは最高に相性悪い

基本的な質問になるけど、「ハードカバー」って、「小説」だけだよね?経済系の書籍とか理系な書籍では、ハードカバーは見かけないけど、何故?

「文庫」というのも、経済系書籍だと、お目にかかったことは、ない。新書形式なら、オッキーの本とかあるのだが

昭和40年代まで、上流のアイコンは「応接間」「ピアノ」「クラウン」そして「書斎に並ぶハードカバーや百科事典」だった。団塊世代は、これらアイコンに憧れ、頑張って応接間付きのマイホームを買い、まずはカローラを買い、そしてハードカバー本で書棚を埋めていった

最初にカローラを買うのは、「部長より先に、クラウンを買う下克上は、許されないから」だよ

ところで、欧米の社会学者から見たら、日本の上流アイコンの中に「西洋絵画」が存在しないのが、不思議らしい。西洋では、「君の家に絵画はあるかな?と質問することで、児童の世帯の経済力を推定できる」程度に、世帯経済力と絵画保有に相関があるらしい

戦前などの旧家だと、「掛け軸」とか「骨董品」の所有が、上流階級のアイコンの役割を果たしていた/高度経済成長以降、東洋美術品が上流アイコンの役割を果たすことは少なくなり、他方、西洋美術品が上流階級のアイコンの役割を果たすことも少なくなった

まあ、犬上家の一族的な旧家だと、未だに骨董品は名家のアイコンかな?/団塊の世代は、ピアノとかにはアイコン価値を見いだしたが、掛け軸の類にはアイコン価値を見いださなかったし、西洋美術品にもアイコン価値を見いださなかった

先に美術品がアイコンの地位から脱落し、次に応接間がハードカバー本とセットでアイコンの座から降り、その次にピアノがアイコンの座を追われた。今はクルマ離れで、クラウンがプリウスやカーシェアにその座を追われている最中

美術品もハードカバー本もピアノもクラウンも上流のアイコンの役割を果たさなくなった現代において、上流アイコンの座を獲得したのは何か?そりゃ、タワーマンションでしょうよ。

あとはフェイスブック辺りでのイベントが上流のアイコン。往年のアイスバケツチャレンジとか、マラソンとか

@T_Y_Lhistoire 首都圏と地方の図書館格差が深刻、、、/書籍購買力がある首都圏で、図書館が整備されてるから、地方より本を買わなくなるパラドックス

本の虫にとってはマンションは相性悪い。自分の知人で、月2万円ペースで本を買う奴が、都内のマンションじゃなく横浜で戸建建てた理由の一つが「蔵書の保管場所がない」/そもそも、モデルルームで、蔵書が沢山ある設定なんかないし

確かに、7000万円くらいするマンションを買おうとする旦那は、それなりに数百冊の蔵書はあるだろうに、マンションモデルルームでは、「蔵書をどこにしまうか」、の提案がない。そもそも、主寝室に本棚置くのか、リビングに本棚置くのか

衣服にはウォークインクロゼットが用意され、キッチンも「見せる収納」「隠す収納」とかいろいろ工夫しているのに、本の収納って、マンションモデルルーム業界では全く意識されてない。これって、ビジネスチャンスでもある。