文化ストックを生かせない地上波

1月7日
「最近、CMタイアップの新曲が減ってるから、ミュージシャンの新曲での活躍の場が減った」というツイート見掛けた。「視聴者が中高年化してるから、CMソングも、往年のヒットソングを使うほうが効果的だから」とのこと/社会が高齢化していくと、文化も「フローからストック」になる

「文化のストック化」、往年のヒットソングのカバー曲が流行るなんてのも、その文脈/いつも思うのだが、30年前とかのヒット番組の企画を、そのまま現代に再現した方が、視聴率取れるんじゃないの?クイズダービーとかクイズ100人に聞きましたとか

しかし、「視聴率が取れることが判っていて」も、「ポリコレがうるさくて、再現できない」なんて番組もありそうだな

「日本は貧しくなってる」論者が、よく「世帯年収の中間値が減ってる」なデータを出して来ていて、それに対して自分は「個人金融資産はバブル期の倍に増えている。フローは貧しくなってるがストックは豊かになってる」と反論するのだが、文化も同じようなことになってる

「豊富な文化ストックがあるのに、それを有効活用出来ていない」件、例えばキー局なんかは「20〜30年前のドラマを、そのまま再放送しちゃえばいい」と思うんですよ。普段は団塊ジュニアは多忙で、視聴できないかも知れないが、年末年始なら視聴できる

キー局の「再放送」が減少してる気がするのだが。昔なら昼の2時〜5時辺りは、1年前放送のドラマとか時代劇の再放送だったのに、今は情報番組をわざわざ制作してる

子供向けアニメの再放送も減少してる、というか壊滅してる/「子供時代、再放送で●●というアニメを知った」という世代も少なくない。昭和生まれの場合は/21世紀生まれの世代は、アニメ再放送を知らないから、結果的にアニメに触れる機会が減っている

「再放送が減ってる」理由の一つとして、「昔の番組を、DVDにしてマネタイズする」ビジネスモデルが確立してしまっていて、「再放送してしまうと、DVDの売行きの足を引っ張る」と恐れてるからなのかも

昔なら昼間に「水戸黄門の再放送」があって、お爺ちゃんお婆ちゃんはそれを楽しみにしてたのが、今はそういうコンテンツは有料になってしまってる。「CSの時代劇チャンネルを観ろ」と。それでいいのか?

まあ、DVD売上とかCS視聴まで含めたら、コンテンツ業界全体としては「過去の文化ストックを有効再利用してる」と言えるのかも知れない/無料アクセス出来る媒体(地上波)の質が劣化してるのだが

CMそのものも、一種の文化コンテンツなので、「30年前のCMをリメイクすれば?」となるのだが、CMもポリコレから逃れられない。30年前は「24時間戦えますか?」とCM出来たのに、今では「2〜3時間戦えますか?」と変更せざるを得なくなってたり。

@kkm2303 つまり、地方局は情報番組制作余力が乏しいから再放送するが、キー局準キー局は「無駄に、番組制作余力がある」から、情報番組を作ってしまう、と。

@hika22 そもそも、BSの加入率って、半分超えてるんでしょうかね?/都市部の難視聴エリアだと、難視聴対策でケーブルテレビに「入らされてしまって」、自動的にBSが視れる、なんてエリアがあります。我が家がまさにそうで、なので「BSが視れる」という意識は全く無い

あと、ワンセグ視聴とかは地上波しか出来なくて、BSは出来ない/視聴デバイスが、大画面モニターからタブレットスマホに移行してるので、その意味でもBS視聴はハンディがある

しかし、「キー局エリアは情報番組制作余力がある」から「夕方に情報番組を流してしまう」一方で「地方局は余力が無い」から「結果的に、情報番組より質がいいコンテンツの再放送
を流す」というのは、パラドックスだよな。都市部住民はカネがあるからBSやCSを観ろ、ということか?

「カネがあるから、BSやCSを観る」というのは、少し違う気がする。「デジタル・デバイド」というのか、「情報リテラシー」というのか、「カネはあるが、アクセスする知識が無かったり、面倒くさかったりする」から、BSやCSにアクセスしてない高齢者って、割りと多いと思う

総務省調査だと「BSの普及率は7割」ということらしいが、能動的にBS視聴してるクラスタは、半分いるかどうかだと思う。高齢者の中には「自分の家のテレビで、BSが視聴できること自体を、知らない」なんて人もいるのではないか?そういう人も含めての「7割」

例えば、自分の親(大阪)は、地上波ばかり観ているが、あるいはBSが視聴出来るのかも知れない。本人たちは気付かないだけで。

情報弱者」という文脈だと、高齢者とともに「子供」というのもいる/地上波から再放送アニメを「追放」したツケは、多分10〜20年後にやって来る。21世紀生まれは、再放送アニメが無い分だけ、アニメを身近に感じなくなってる

日本が「サブカル大国」「クール・ジャパン」になったのは、昭和生まれ世代が「アニメ再放送」の洗礼を受けてアニメオタクになったから/21世紀生まれでは、間違いなくアニメオタク比率は減少する。つまり、2030年頃には、日本はサブカル大国から脱落する

自分と、自分の子供を比較すると非常によくわかる。自分の子供は、自分の半分も、いや3分の1もアニメを観ていない

地方局では、今でもアニメ再放送とか、してるのか?となると、「アニオタ出現率」は、首都圏より地方の方が多くなる、というパラドックスが成立する

時代劇も、ゴールデンタイムはおろか、昼間の再放送からも追放されたから、間違いなく「今の子供は、昔の子供と比べると、時代劇を観なくなった」よな/昔の子供は、本人は観なくても、親や祖父母が時代劇観てるのを横目で観てたから、「何となく、時代劇を知っている」

情報学者?の新井紀子氏が「子供が時代劇を(横目でもいいから)観る」ことで、「語彙が豊富になったり、歴史的リテラシーが身に付く」と言ってた。判りやすく言えば「教養が身に付く」/地上波から時代劇が追放されたから、今の子供は「時代劇的なリテラシー」を身に付けずに大人になり、教養が断絶する

「時代劇チャンネルがCSであるから、それでいいじゃないか」という議論は、子供については成立しない。「意識しなくても、時代劇がある」という環境が子供には重要なのであって、「意識しないとアクセス出来ない」CSだと、子供はまずアクセスしない・出来ない

水戸黄門というコンテンツが、「45分頃に、黄門様が、『この紋所が目に入らぬか!』と決め台詞を叫ぶ」というコンテンツである、と言うことは、昭和生まれなら9割は知っている/多分、21世紀生まれは、そういう水戸黄門の御約束を知ってるのは3割程度じゃないか?少なくとも自分の子供は知らないだろう

そうなると、つまり「葵の御紋」という慣用句は、21世紀生まれには通用しなくなります。教養がまた一つ伝承されなくなる