空き家リフォーム助成制度について

12月25日
空き家リフォームに100万円助成、空き家入居に月4万円入居の新制度。国としては大盤振る舞い/でも、新入居者が以前住んでた民間アパートとかが今度は空室になるわけで、空き家問題自体は解決しない?

空き家問題の一番の問題は、「そもそも空き家オーナーが、空き家であることに『困ってない』ことが、問題」なんだよな/比喩的に書けば、本人の世帯年収が800万円、金融資産5000万円、そこに親の家が転がりこんだ。既に自宅があるので、有効活用のインセンティブが希薄

「改修費用のうち100万円を助成」らしいが、肝心の改修費用の方が、200万円で済むのか500万円掛かるのか1000万円掛かるのか、素人空き家オーナーには全く費用が読めない訳で、そこの情報非対称が、空き家オーナーの行動を阻害してる

制度設計的には、「空き家改修、自己負担額は200万円で、残りは国が改修費用を全額負担します。但し先着順で、予算を使いきったら打ち切ります」な制度にしたほうが、オーナー側からしたら「予算が見える化されてる」ので、空き家活用に踏み切りやすくなると思う。

空き家活用は、「移住すみ替え支援機構」の存在をもっとアピールする方が効果的だと思うのだが。/機構の人にヒアリングしたことあるが、「民業圧迫と言われかねないので、自らあまりアピールしてないんですよ」と言ってて、勿体ないと感じた

いわゆる「相続で実家空き家を取得」の場合、取得してる子供側の年齢が50歳台とか60歳台とか/これが30歳台とか(つまり、まだ自宅を買ってないタイミング)に相続していれば、実家空き家に住む選択肢を取るのだが、相続タイミングが遅いので、自宅を別に買っちゃうんだよな

あと「建物の数は、増え続ける」ので、建物の「居住用以外の利用法」をもっと積極的に開拓しないと、空き家問題は解決しないぞ/例えば「4LDKの戸建空き家を、プチ植物工場にする」とか

いわゆる「世間的に、足りない」とされる建物へのコンバージョン。グループホームとか宿泊施設(=エアビー)とか。でもそれだけの需要だけでは、今後の膨大な空き家「供給」を受けとめきれない

結局、長嶋修氏が主張する「新築住宅供給の総量規制」という強硬手段を取らないと、空き家問題は解決しないということか/今のアパート供給量は異常

三浦展氏が「所沢辺り、猛烈に高齢化、若年層減少が進んでる」と先日エントリー書いてたが、そういう辺りが10年後に空き家化する訳です/そういう「東京30キロ圏」の空き家化を防ぐ手段の一つに「通勤鉄道の超高速化」があると思う。

その文脈で言えば、小田急複々線化工事完了は、町田とか麻生区辺りの空き家化を、少しは遅らせる効果はあるのかも知れない

あと、「リフォームするより、ローコストビルダー新築の方が、安く済む」パラドックス。新築は定形で、リフォームは不定形だから、リフォームの方がコスト掛かるんだろうな

実際、新築工事現場は、パネル工場でプレカットされたパネルを現場でプラモデル感覚で組み立てるだけだから、経験浅い職人でも工事できるんだよな/現場で細かい収まりを都度都度判断しなきゃならないリフォーム現場の方が、はるかに施工は難しい

長嶋修氏の「新築絶対量規制」って、国が導入したくても、地方公共団体レベルでは導入難しそうだよな。「所沢市は新築絶対量を規制します」としても、「狭山市は新築絶対量規制しません」なら、「所沢市の人口が減って狭山市の人口が増える」と思われちゃう

新築絶対量規制を本気で導入したいなら、一番人口流入圧力の強い自治体、つまり港区中央区江東区辺りに、国が強引に押し付けないといけない。一種のゼロサムゲームだから、ゼロサムゲームの勝者に、強引に規制に参加してもらわないと

そもそも、「空き家改修に100万円補助」「元空き家入居に月4万円補助」とかして、制度が普及したら膨大な財政負担になるのだが、財源手当の話があまりないようで、ということは「そんなに普及しない」と読んでるのか?

単純計算で、仮に580万円で空き家改修し、うち100万円が助成されるなら自己負担480万円/それで子育て世帯とか高齢者に「月4万円」で貸せば、借り手側の負担額が実質ゼロ円、国が家賃相当を支払ってくれる。年間収入が48万円なので表面利回り10%。悪くない

ただ、この試算はあくまで「表面利回り」だから、固定資産税とかのコスト、日々の維持修繕のコストも掛かるし、初期の手続き手間の面倒さがネックにはなるけどな

空き家バンクというのがある。自治体が空き家を登録して、空き家を買いたい、借りたいという人とマッチング/しかし、買いたい借りたい側は「眺めがいい家」とか「趣きのある家」とか、曖昧模糊な条件で探してくるから、なかなかマッチング成立しない/こういうマッチングこそ、人工知能を活用すべき

前もツイートしたと思うが、空き家マッチングは自治体にさせるより、農協にさせる方が早いらしい。

空き家補助金制度、それでも「500万円掛けてリフォームしても、(月4万円補助金貰って住む)借り手が見つからない」なケースも想定される/なので、「この家リフォームされたら、半年後に借ります!」な入居予定者を確保して、その後にリフォームする、という先行予約スキームにしたほうが安心

先日買った牧野知弘本によると、空き家リフォームのポイントは「水回り」らしい。いくら使える水回りであっても、やはり20年30年経過している水回りは嫌われ、借り手が付かない

空き家補助新政策、「公営住宅の新規建設をストップして、それで浮いた税金分を空き家補助に回す」という文脈なのかな?

あと、空き家の利活用に必要なのは、「リフォームにも、戸建賃貸にも、両方に詳しい人材の育成」だよな。現状はリフォーム側と不動産仲介側で、人材が分かれてしまってる

「空き家リフォーム+中古売却」ということなら、カチタス辺りにノウハウが蓄積されてるのか

あと、補助空き家に入居してもらう対象者は情報弱者が多いと思われるから、いかに制度を周知させるか?も課題だよな/弱者向けの政策の過半数は、そもそも弱者にその存在を知られてなかったりする

「借り手が本当に付くのかどうか、不安」ということで、空き家オーナーは有効活用リフォームに二の足を踏む/(借り手が現れようが、現れなかろうが)一旦借り上げてくれる移住住みかえ支援機構の存在意義は、そこにある

移住住みかえ支援機構については、先日大和ハウスが「全物件、支援機構の対象にします」な発表してたりしていて、ハウスメーカー側はうまく活用しはじめている/もっとも、ハウスメーカーの供給シェアは2割程度しかないが

空き家率を抑制する方法は実はカンタンで、アパートの相続税評価緩和税制を止めればいい

「空き家820万戸のうち、立地的にも建物構造的にも有効活用に耐えれる建物は50万戸に留まる」と国交省は推計/残り770万戸をどうするつもりか?取り壊し推進政策か? / “今後も増える活用が難しい空き家!売却にも有利な賢い持ち家の…” http://htn.to/g1mchv

牧野知弘氏が「820万戸の空き家の中から、有効活用に耐えうる50万戸がどれなのか、フィルターの役目が必要」として、そういうフィルター機関の創設を主張してるよな

今回の空き家100万円&月4万円補助政策、国交省としては「有効活用に耐えうる50万戸のみに向けた政策」というつもりで発表してるんだろうが、空き家オーナー側からみたら「全ての空き家、820万戸に向けた政策」と勘違いしてるんだろうな

たぶん、「ウチの空き家は、選ばれし50万戸の中に入ってる」と勘違いしてる空き家オーナーが過半数と思われ

「選ばれし空き家50万戸」が政策対象なら、国の負担額は最大でイニシャルで5000億円、ランニングで月200億円(年2400億円)。それで空き家対策コストや公営住宅建築コストを削減する腹積もり

田舎に行くと、そもそも(ファミリータイプでも)家賃が月4万円もしないエリアとかあるだろう/そういうエリアの場合、空き家移住の賃借人に、「空き家移住の補助金が支払われる」ことになれば面白い/月2万円な家賃に対して月4万円が国から補助されたら、差額2万円が「移住補助金

ところで「老いる家 崩れる街」という新書を買おうと、通勤帰り道の本屋2軒を覗いたが、売ってなかったな。アマゾンで買わなきゃならないのか?

「中野区辺りで、3DKで15万円なマンションに住み、子供は1人だけ」なファミリーが、果たして「所沢市で月14万円、実質自己負担10万円な戸建(4LDK)な元空き家に移住し、その分、子供を一人か二人余分に作る」ようになるのかな?

ニュースピックスのコメントとか見てると、「そもそも、家賃補助を貰うような層は下位層だから、貸したくない」なコメントが見られる。この辺の懸念事項も、かなりハードルなんだろうな/月4万円以下の家賃設定(実質、国が全額負担)でないと、厳しいのも知れない

家賃補助対象な下位層相手は、つまり貧困ビジネス貧困ビジネスは、プロならそれなりにビジネスになるが、一般人にはハードルが高い

実際、親の実家を相続したとき、有効活用がうまく進まないハードルの一つに、「親の家財、あるいは自分の子供時代の家財があって、なかなか断捨離に踏み切れない」というのもあるんだろうな

「空き家リフォームのキモは、水回り」と先程ツイートしたが、今回の空き家補助制度の想定ターゲットが「公営住宅に入るような層」だとしたら、公営住宅側も水回りはイケてないから、そんなに水回りは重視しなくてもいいのかもしれない

「中古を買ってリフォーム、いやリノベーションする」。今までリビタとか東京R不動産とか、「デザインを重視する層」に片寄っていたけど、今後の「大量の空き家の流動化」の為には「そんなにデザインには関心のない、マスな層」向けの、「そんなにデザインデザインしてない普通のリノベ」の普及が必要

そういう意味では、群馬のカチタスのような「そんなにデザインデザインしてない、フツーのリフォーム」による空き家流動化が、今後は求められていくのかもしれない

単純に「リフォームは新築より実は高くつく」が、「社会政策的には新築よりリフォームの促進が必要」なら、望ましい政策は「新築税の導入」と「リフォーム補助金の導入」となる

@tarepandism 確かに、「空き家リフォームに100万円」払うなら「解体費用に100万円」払うことも出来る。小さい家なら100万円で解体費用は賄えちゃう/政府が解体に補助金出すのに躊躇するのは、やはり日本人特有の貧乏根性、もとい「モッタイナイ精神」の表れなんだろうな

あるいは、「人口減、必要住宅数減」という「敗北を、認めたくない」から、家屋数を維持しようとしてリフォームにだけ補助金を出して、解体には補助金出さないのかもしれない

まあ、個人的には、今現存する家を取り壊してしまうのは「モッタイナイ」と思う。感情として/しかし、行政は、そして政治家は、感情じゃなく合理性で進めなきゃならない

「木材の使用量」という観点だと、「家を解体して新築する」のと「家を丸ごとフルリノベーシュョンする」のとで、そんなに木材使用量に差は出ないんだろうな

@tarepandism ただ、そういう木密エリアは、同時に道路が狭小(幅員4mない)だったり、権利関係が錯綜(底地人、借地人、借家人がいたり、通行権とかあったり)してたりするので、5年内にその辺の権利関係を整理するのは不可能なんだろうな

テクニカルな話をすると、「空き家のリフォームに100万円補助」の「空き家の定義」をどう決めるのか?住民票の存在か?電気ガス水道契約の不存在か?/うまく制度設計しないと、偽装空き家による補助金詐取が発生してしまう

あと、リフォーム会社がバックにある「空き家相談受け付けます」な窓口だと、解体更地化が最適解の場合でも、「リフォームして貸しましょう」な方に誘導しちゃったりするんだろうな

「国は売却用などを除く空き家を400万戸に抑える方針」/「出生率1.8」「東京圏への社会流入ゼロ」同様の、実現性ゼロな目標設定? / “田口 元美 - 国土交通省は売却用などを除く空き家を25年度に400万戸程度に抑える目標を立…” http://htn.to/5R17bB

郊外黄昏ニュータウンの空き家に「共働きの子育て世帯」に来てもらうには「在宅勤務とのセット」にするしかなく、確か大和ハウス兵庫県三木市でそういう取組をクラウドワークスベンチャーとやってたと思うが、その後どうなったのか?