鉄コの部屋 (18)地方が新幹線を欲しがる訳

(「なんでも掲示板」 00年11月投稿済)


よく、「地方はやたら新幹線を欲しがる。在来線を高速化すればこの都市へは3時間以内で
行けるようになり、航空機にも対抗できるのだから、在来線高速化でいいんじゃないか?」と
いう意見が、鉄道マニアや在京マスコミで語られます。

しかし、それは真理である反面、当たっていない点もあります。

単純に速く移動する、ということなら、在来線の高速化(振子特急の導入、電磁ブレーキ採用に
よる最高速度アップ等)の方が費用対効果は高いでしょう。
しかし、トートロジーですが、地方は「新幹線」が欲しいのです。

例えば、東京の企業に勤めている人(あまり鉄道に詳しくない人)が、自社の工場の地方進出先を
探しているとケースを想定しましょう。
その場合、「秋田は最近『秋田新幹線』というのができたらしいなあ。富山県も進出してくれ、
と盛んにセールスしているケド、富山は新幹線がないから、やはり秋田に工場を出そう」と
決定するケースは結構あるでしょう。
たとえ、「秋田新幹線」がミニ新幹線でスピードが遅くても、富山へは「ほくほく線」が
高速運転していて秋田より速く行けても、鉄道シロートの東京人にとっては、
「新幹線の通っているところ=便利なところ」、「通っていないところ=不便なところ」と
いうステレオタイプな思い込みがあるのです。

企業進出ですらこの状況ですから、観光客の旅行先選定、となるともっとヒドイでしょう。
つまり、ミニだろうがなんだろうが、「新幹線」が来れば、観光客も企業も来るのです。

「在来線の高速化の方が速いし、充分じゃん」という意見は、
「(観光先・企業進出先として)地方を『選ぶ』側、東京側」の論理です。
『選ばれる』側の地方の論理としては、「『選ばれる』為にはとにかく『新幹線』が必要」
なのです。

この点のギャップがわからないと、整備新幹線論議はすれ違いになります。