付き合いで出席したスパコンセミナー@大手町サンケイホール、をアップしておきましょう。
【会の概要】
1.出席者は50名程度。
2.主催=財団法人計算科学振興財団(神戸の財団、現在スパコン棟屋を神戸に建築中)
共催=独立行政法人 理化学研究所
スーパーコンピューティング技術産業応用協議会
後援=文部科学省、経済産業省、日本経済団体連合会、日本商工会議所、関西経済連合会
3.3部構成
?第一部=理化学研究所 計算化学研究機構設立準備室長 平尾公彦氏
?第二部=東京大学 先端科学技術研究センター教授 西成活裕氏(「渋滞学」の権威)
?第三部=三菱重工業副社長 青木素直氏
最後に「仕分けに抗議する」緊急アピールを採択。
4.最初に計算科学振興財団理事長が挨拶、その後「来賓」として文部科学省・経済産業省役人が挨拶。
いずれも口々に「仕分け結果への不満」を口にする。
因みに文部科学省役人は「仕分け会議」での説明役だった人。
「自分の力不足だった。
科学技術分野の仕分け作業で、スパコンがトップバッターだった。-
そのため、仕分け人の方が「気合十分」だったので、やられてしまった。」
【第一部:理化学研究所 計算化学研究機構設立準備室長 平尾公彦氏】
★現在、「スパコン」と言えばハードの計算機の製作にばかり目が行きがちだが、
ハードもさることながら
・スパコンのためのソフトウェアの開発
・スパコンを使って何を開発するか、の利用法の提案
・スパコンに長けた人材の育成
の方が、むしろ重要。
★10ペタの演算を行う「ペタコン」の場合、ペタコンを利用する側も、ペタコン製作段階から関与しないと、
うまく開発できない。
★1ペタを超えると、実験と同レベルになる。(計算科学)
一見法則がないカオスの世界も、スパコンで解析すると、一定の法則性が見出せることができる。(法則の発見)
パラメーター(変数)が多岐に亘る場合、その全てを代入して、全部検証する、という荒業も、スパコンなら可能。
→どれが最適組み合わせなのかを見出す。
★日本ではスパコンは主に学術用に使われているが、世界的には主に産業用に使われている。
★スパコントップ500=アメリカに277台、中国21台、日本16台。
なお、これは「スペックが公表されているスパコン」だけの集計であり、企業の極秘スパコンや軍事用スパコンぱ
集計に入っていないので、アメリカなどは実態はもっとスパコンを持っているのではないか?
★気象シミュレーション・・・現在のスペックでは「低い雲」の予測が困難。
ペタコンでこれが可能になれば、ゲリラ豪雨の予測が可能に。
また、津波の正確な予測も可能に。
★新薬開発(ドラッグデザイン)も、新薬候補となる化学物質を片っ端からシミュレーションする、という使い勝手もできる。
また、肥料開発でも、従来のような肥料合成法(高圧状態で合成)じゃなく、もっと簡易な方法(根粒バクテリアと同程度の環境下)でできないか、シミュレーションできる。
★量子コンピューターの開発・・・シミュレーターが活躍
「スパコンを開発するためにスパコンを使う」
★シュレディンガー方程式・・・現時点は水素原子しか判っていない。
ペタコンがあれば、より高分子も解析できる。
【第二部:東京大学 先端科学技術研究センター教授 西成活裕氏】
★「渋滞学」を提唱、本も執筆しTVにも出演。
★取扱うのはクルマの渋滞だけではなく、駅構内やコンサートホールのようなヒトの渋滞や、神経伝達物質の神経回路内での渋滞、インターネットのパケットの「渋滞」も取扱う。
★自分はパソコンレベルでしかシミュレーションできないが、学生にマニアがいて、
地球シミュレーターで渋滞シミュレーションしている。
★スパコンによる渋滞シミュレーションで、判ったこともある。
出口にあえて障害物を設けて、ヒトの脱出時間が「どれだけ遅くなるか」をシミュレーション。
→予想に反して、脱出時間は「障害物があった方が、速くなった」
→実際にエキストラを雇って実験してみたら、本当に障害物があった方が速くなった。
★都内の渋滞予測
現在は車線数の要素を組み込まずに予測。(パラメータ(変数)の数を落としてシミュレーション)
→ペタコン化で、車線数も組み込んだ予測が可能になる。
★本当は上り坂なのに、「上り」と認知できずに無意識にスピードダウンする「サグ」が渋滞原因の大半。
★渋滞は「後ろに移動して行く」
★車間を詰めていると、渋滞になる。
(クルマは車間が40mを切ると、サグなどのささいなキッカケで渋滞になる。ヒトは1.8人/?を超えると渋滞になる。)
あえて車間を空けた車列を渋滞内に投入すると、渋滞解消につながる。
(スパコンでシミュレーション→小仏トンネルで社会実験して成功)
★また、運転者の反応速度が遅いと渋滞になりがち。
★自然界(例:アリ)は渋滞しない。理由は不明。
【第三部:三菱重工業副社長 青木素直氏】
★三菱重工・・・「機械のデパート」
受注生産がメーンで、量産品を作らない。
★そのため、「試作品」を作ると、全体に対して試作品製作コストのウェイトが高くなりコストアップ要因になるし、
開発期間が長期化してしまう。
★よって、リアルな試作品を製作せずに、「コンピューター内にバーチャル試作品を作ってシミュレーション」することで、
試作品製作コスト+試作品製作期間の双方を節約できる。
★例えば、船舶の試作品の場合、「船舶の振動」と「波の振幅」という2つの要因が複雑に絡み合ってくる。
これをバーチャルで再現するには、従来のスパコンでは不十分で、高性能なスパコンが必要になる。