遺言控除より、遺言不動産寄贈の100%受理の方が効果的

産経のニュースで「遺言控除」という新制度が出来るというニュース。裁判員制度のようなクソ制度を作るときは徹底的に自分は攻撃するが、この制度目的は素直に評価したい/ただ、それを作ったのが自民党の「家族の絆を守る特命委員会」というのがなんとも。目的の中に「在宅介護の促進」と書いている点もいやらしい

恐らく自民党の特命委委員会は、「遺言控除を設ければ、遺産目当てに在宅介護する人が増える」と単純に考えたんだろうが、遺言控除の対象者、つまり相続税課税対象者って、いわば金持ちだから、在宅介護に至らずに、素直に老人ホームに入ると思うのだが。

「遺言状を普及させる」という政策目標は非常に重要。ただ、遺言控除制度が、遺言状の普及に効果的かどうかは別問題/相続税がかからない庶民クラスの相続局面で、遺言状が存在しないことの弊害が非常に大きい。普及させるべきは、相続税と無縁な層での遺言状

なぜ遺言状の普及が必要か?1.遺産分割を巡る家裁での調停審判が急増している、公正証書遺言を作る行政コストの方が、家裁審判の司法コストより抑えられるので、社会的メリット大

2.遺産分割に時間がかかると、その期間だけ財産を「塩漬け」している訳で、社会的にロス/3.そして自民党が危惧しているのは、「その結果、空き家が増えてしまうこと」。建物の有効活用が遅れれば、それだけ空き家が発生しやすくなる

事前に遺言状で、(空き家予備軍な)建物の予定相続人を指定しておけば、予定相続人は前もって建物の活用方法を考える。定年が近い人が、遺言状で予定相続人に指名されたので、「定年後、今の杉並の家を売って、高知のオヤジの家を相続するか」と人生設計できる。

これが遺言状がなかったら、そのまま東京で暮らし続ける人生設計になり、突然「高知の家の兄弟で押し付け合う」抗争に巻き込まれたりする。挙句、高知の家は空き家になる。

私見だが、遺言状作成のインセンティブを庶民レベルに及ぼしたいのなら、「遺言状において、どうしようもない田舎の家を『国に寄贈します』と書いた場合、国は必ず引き取ることとする」という「遺言寄贈受理」の方が効果的じゃないかな?

田舎に家がある人で、「田舎の家だけ相続放棄できないか?」「田舎の家を自治体や国に寄贈したいのに、引き取ってもらえずに困る」という相談が相次いでいる。こういう層に対し「公正証書遺言があれば、国は寄贈を断りません」と引き取り保証を付けてあげれば、遺言状を作る人は増えると思う。