オフィスビルの経済学

12月2日
「分譲マンションを語るツイッタラーは多いが、オフィスビルのスペックを語れるツイッターは存在しない」と思ってたら、N的まにあ様がビルスペックにも精通されてることを発見。世の中広いわ。

天井高2750なオフィスビルが評価されるのは、視覚心理的効果以外の何物でもない気がする。「広く見えて、気持ちいい」

というか、N的まにあ様って、不動産金融の前は家電業界アナリストもやってらっしゃたのか。なのに、ここまで分譲マンション知識もオフィスビル知識も蓄えてらっしゃっていて、軽い敗北感、、、

予告しとくが、ヒマな時に「オフィスビルの経済学」を書いてみたい。以前「住宅展示場の経済学」を書いて、割りと好評だったので

オフィスビル開発の世界は、数字がナンボの世界だから、「天井高2750だと、天井高2600より、何%賃料がupできる」という可視化された客観データで商品企画考えなきゃならないが、そこまで各社「科学してない」気がする。

「ワンフロアの大きさと、ビルスペックは比例する」がビル業界の商品企画の常識だった訳ですが、その常識を疑って「ワンフロアは小さくても、ハイスペックを求める客はいる筈」で成功したのが野村PMO。まだまだビル業界には「疑うべき常識」が転がってる気がする。

本当は、将来「ホテルやレジデンスにコンバージョンしやすい」よう、予め設計するのが賢いビル商品企画なんだろうな

森稔の著書によれば、「広大ワンフロアにニーズがある」というのは、アークヒルズで「意図せず発掘されたニーズ」だったらしい。設計の都合上、仕方なく広大なワンフロアにしたアークヒルズが、特に外資に大人気

ビルオタクの中では「最近のビルは、スタイルがカッコ良くない。ワンフロアが広大過ぎて、ずんぐりむっくりで、スラッとしてない」と不評だったりする

この辺、昨日の「霞ヶ関こそフリーアドレスを採用せよ」なツイートに通じる。霞ヶ関の中央官庁庁舎は、真ん中がエレベーターや内廊下になっていて、広大ワンフロアを取りにくい

そもそも霞ヶ関庁舎、気密性からいっても「?」だし。民間の最新ビルは冬でも冷房、霞ヶ関は冬だと暖房/それを知らない環境省が「ウォームビズで、冬の温度設定は20度にしましょう」とか。

環境省は「当然、冬は暖房してる筈」と思ってウォームビズを呼び掛けてるが、最新オフィスビルだと冬でも冷房だから、目標温度を設定されると「その温度に向かって、冷房ガンガン」となる

天井高と言えば、小学校の天井高規制の話を思い出す。草加市が小学校の天井高を基準より低くしようとしたら、文科省が「待った」。理由は「子供たちの心理に悪影響」/草加市はめげずに、天井高が小学生に与える心理的影響を「実験」。結果は「むしろ天井低い方が学習効率高まる」。文科省赤っ恥

オフィス天井でも同様の実験行うべきなんだろうな。天井高2600のオフィスと、天井高2750なオフィスで、どっちが仕事のパフォーマンスが高いか、実験

パソコンを長年使ってると、ディスクに「飛び飛び」に記録されることになる。元々は連続して記録してたのに、部分消去されると、そうなる/その状況は「デフラグ」すると解決する/実は、広大ワンフロアビルのリーシングでも、パソコンと同じ「飛び飛び現象」が発生する

賃貸部分が「虫食い状況」になると、飛び飛びの床を新規テナントに借りてもらうのはなかなか難しい/だから、虫食いの賃貸床を「デフラグ」するのが、ビル管理者の腕の見せどころ

飛び飛び賃貸床のデフラグというのは、テナント側の事情じゃなく、ビルオーナー、ビル管理者側の勝手な都合だから、移転費用はビル側負担だし、移転後の賃料も若干ディスカウントされる場合もある。

オフィスリーシングの難しい点は、賃貸の単位が「整数」じゃなく「小数」な点/レジデンスなら賃貸単位は「一戸単位」で、「4.5戸を借りる」みたいな小数単位の賃貸は不可能/オフィスだと「101.25坪」とか「163.78坪」とか、小数単位の賃貸が普通

だから、経営不振なテナントだと、「150坪のうち30坪を解約して120坪だけの賃貸にして、賃料を浮かせる」なんてことを平気でやる。こうなると、中途半端な30坪の空室が出現し、飛び飛び空室になる

分譲マンションの場合、不動産経済研究所とか東京カンテイとかが、70年代から新規発売をデータベース化していて、市中のストックの9割以上は把握されている/オフィスの場合、三鬼商事や生駒商事、もといCBREが全部把握してる訳じゃない

個人オーナーな中小貸ビルで、三鬼商事とかが把握してないストックも多いし、あと「当初自社ビル使用だったのが、途中で貸ビルにチェンジした」なんてのも多い

ということで、オフィスのリーシングの世界は、マンション畑の人間には、なかなか理解しづらかったりする

@kiyoki52 ケルン大聖堂に見られるように、欧米の教会は意図的に高くしてますね。ケルンなんかは、大聖堂より高い民間建築を認めない。

@kiyoki52 ウィーン少年合唱団のファルセットボイスは、教会建築の高天井とあいまって、「空から声が降ってくる」らしい