三池の地下空間を封印してしまう世界遺産登録に反対する★

5月5日
軍艦島とか八幡製鉄所とともに、三池炭鉱も『世界遺産』に登録されるらしい/韓国政府はこの世界遺産登録に反対のようだが、自分は別の理由で、特に『三池炭鉱』の登録には猛反対である

三池炭鉱は、世界にも類を見ない海底炭鉱。その深度とか、掘削延長距離は、相当なモノ。地質データ、炭質データ、炭鉱坑道データなどは、貴重なデータ

仮に、三池炭鉱と同じだけの坑道を『今から』掘るとすれば、それに要する時間と手間は、莫大なモノになってしまう/何が言いたいのか?と言えば、『三池炭鉱は、その地下にある坑道ネットワークそのものに、莫大な経済的価値がある、ということ』。

三池の地下ネットワークを活用して、カミオカンデ的実験とか、遺伝子組み換え実験とか、その他多種多様な実験が可能なんですよ。あれだけの地下を、今から掘ろうと思ったら数千億円はかかる/そのような『貴重な地下空間』を、ユネスコ世界遺産云々かんぬんで、『お蔵入り』させていいのか?

自分が好きな真保裕一の小説に『ローカル線で行こう!』がある。ネタバレ話をすれば、あの小説は『廃鉱を、そのまま放射能廃棄物処理場として転用する』という計画を巡る騒動。/『放射能廃棄物処理転用廃鉱』ということだと、間違いなく三池はその筆頭候補ですよ。

三池を世界遺産に登録なんかしてしまったら、『三池の放射能廃棄物処理場転用』は間違いなく不可能になる。日本は、放射能廃棄物処理場の有力候補地を、世界遺産云々で消し去っていいのか?

詳しくない人の為に言っておくが、坑道の径長は相当広いから。坑道列車が行き交うことが出来る位だから/各坑道を最先端企業に『分譲』し、企業が坑道列車を活用して各種研究や生産を行う、という未来図が、『たかが世界遺産ごとき』で不可能になったのが、悔しい

あと、「三池は石炭を掘りつくしたから閉山した」と誤解している人もいそうなので、訂正伝票。これは北海道の炭田にも言える話だが、三池閉山は「海外炭より、掘削コストが嵩んだから閉山した」だけだから。コストさえかければ、まだまだ産出継続は可能。

ルンバに代表されるようなロボット技術を掘削に応用すれば、三池炭鉱が海外炭並みの競争力を回復する可能性だって残されている。つまり、三池炭鉱はまだ『復活』がありうる/世界遺産などというカビ臭い博物館入りさせることで、『三池の現役復帰』は絶望的になる。

石炭だけの産出だけで経済競争力取り戻すのは難しくても、同時に取れる高温水を使った熱利用(例:植物工場利用)とか、地下へのCO2貯留とか、そういう複合利用を行えば、トータルで三池炭鉱が経済競争力で海外炭と対抗できる余地はある。

因みに、『世界遺産としてのかび臭い三池炭鉱』じゃなく、『炭鉱の復活』とか『地下空間の利活用』という『生き生きとした三池の復活』を真剣に考えるなら、今がラストチャンス。というのは、三池の閉山前の状況をリアルに知っている関係者が、そろそろ鬼籍に入ってしまうため。

というか、三池の『閉山』決定そのものが、多分に政治的思惑が大きかった訳でして。一つには『総労働への打撃』の思惑、もう一つは『原子力シフトの宣言』/三池の閉山で、事実上石炭業界から優秀な人材が集まらなくなり、それが(かろうじて生きていた)北海道の炭鉱への追い討ちになった

日本が国内炭鉱維持政策を放棄したのは、果たして経済合理性だけの理由か?自分はどうしても、別の意図を感じてしまう/労働運動の源流であり精神的支柱であった『炭労』の存立そのものを奪い去る、それによって労働運動封じを企図したのでは?と穿って見てしまう。

いまの福岡都市圏が、人口を維持してアジアのゲートウェイ都市の地位を確立しているのは、筑豊〜三池〜長崎の、炭鉱エリアの経済的ストックの蓄積を、そのまま生かしているということなんだよな。

自分が生まれた頃、1970年頃の日本の石炭技術者は、技術レベルも世界的に高かったし、マンパワーでも結構いた訳です。⇒これが1990年にかけ、事実上技術者がゼロになってしまった訳で。大半は失意のうちに、他の職へ転職してる/いよいよもってそれらの人々も、生物寿命を迎えつつある

自分の世代は、まだ高校生の頃までは、国内でいくつか炭鉱が存在していた。北海道と九州が、炭鉱地帯であった栄華の『残り香』を感じることができた/関西発の寝台特急『あかつき』の1往復は、わざと筑豊本線と通っていたりしたのも、残り香の一つ。

(自分が育った)大阪だと、産炭地筑豊は、そんな遠い場所じゃなかった/これが東京から見たら、筑豊も夕張も『はるかかなた』ですよ/東京一極集中、大阪⇒東京シフトが、人々から『産炭地の香り』を意識されなくしてしまった

昭和の30年代とか、優秀な学生は、こぞって石炭会社に就職していたものですよ。バブル期の学生が都銀をめざし、今の高校生が医師を目指すのと一緒

『就職すれば安泰』と思われた石炭会社も、20年も経てば悲惨な末路/今医学部を目指している高校生たちの、20年後の末路が悲惨でないことを祈る。

だから、三井石炭とかの『一流の石炭会社』って、わかりやすく譬えれば『長銀』『日債銀』みたいなものですよ。人材が超一流なのに、時代の流れでそのまま倒産。

炭鉱夫って、命の危険がある分、日当は高かった。それこそ、十数年間死ぬ気で働いたら、一財産を稼げたりした。/そうして稼いだ『小金持ち』が、北部九州に散在しているわけで、それが福岡天神繁栄の養分補給になっている。