新宿下落合の通称「タヌキの森」で、新宿区がマンション業者に下した
建築確認について不適法なので取り消し、との判決が東京高裁で下った。
業者を擁護するつもりはないが、こういう行政の裁量部分について
司法が過度に関与するのは、いかがなものか?
具体的には「都条例に規定する空地規定基準を(形式的には)満たしていない」が、
一方、新宿区側は「中庭確保がなされているため、実質的に防災上支障なし」と
判断されるため、条例内の例外規定の適用が可能、と判断し、確認をOKした。
近隣住民が例外規定適用はオカシイとして提訴した、という顛末。
原発訴訟等であれば、近隣住民に現実の脅威が予想されるので
「訴えの利益」が近隣住民にもあるので、行政裁量の是非について司法側が
厳密な安全審査を要求するのは、理解できる話だ。
しかし、万一、当マンションの配棟計画に不備があり防災上問題があったとしても、
被害を受けるのは「配棟計画を承知で買ったマンション購入者」であり、近隣住民ではない。
となると、原発訴訟程の安全審査を行政裁量に求めるのは、少し違う気がする。
結局、住民側の「防災上の問題を指摘する」というのは方便であり、
ホンネは「他人地の処分方法について、自然保護を優先すべし、という価値観の押し付け」ということになる。
あと、「例外規定の適用」というのは「伝家の宝刀であり、規定はあっても使われることは皆無」と
思われがちだが、そうでもない。
案外、行政側は開発側とプラン協議を行なって、実質的な審査を行なうものである。
また、申請側の事情を斟酌することも、結構ある。
一番典型的なのは阪神大震災のケースであり(そうかあれから14年か・・)、
被災地の既存不適格住宅の再建の場合、
形式的には建築基準法にマッチしない場合でも、「例外規定」で建築がOKになるケースがある。
小生自身、西宮市で1件、灘区で1件、そのような案件を手掛けた。
(その代わり、隣接住民の同意書を求められた)
多分今回の原告達から見れば「阪神大震災の被災者はかわいそうな善人、
開発業者は血も涙もない悪人」ということで、例外規定の適用に差をつけて当然、とでも
思っているのだろうが、世の中そんなに白黒わけられるものなのか?