常識成立の時代背景を捉えよ

5月2日 
軍事で思い出した話/今読んでる「帝国陸軍の本質」という本が実に面白い。/旧陸軍は、現場が東京を無視して独断専行して進軍し、満州さらに支那へ戦線拡大して、挙句自滅した/「帝国陸軍の本質」の筆者は、その理由を明治初期の陸軍大学校教官メッケルの教育内容にある、と看破
メッケル教官は、明治陸軍の士官のタマゴたちに、「場合によっては、大本営の命令を待たず、独断で行動すべし」と教育した。その教育があって、帝国陸軍は現場が勝手に行動する軍隊になった/しかし、メッケルがそのように教育したのには、それなりの理由があった
メッケルは19世紀半ばのプロイセン軍のメソッドを日本に移入/プロイセン軍は最強の軍隊で、ドイツは統一するし、フランスも破った。当時のプロイセン軍は、独断専行「だから」強かった。何故か?
19世紀半ばは、まだ無線電信が発展してなかった。だから、現場軍と大本営とは、軍馬とか伝書鳩とか、アナログな方式で命令を伝達するしかなかった。だから、大本営の命令を待ってたりしたら、行動が大幅に遅れて致命傷になる。/だからプロイセン軍は現場判断で独断専行するようになった
帝国陸軍の士官のタマゴたちは、メッケルから「独断専行するように」と教育されたとき、「なぜ独断専行すべきなのか?」を深く考えなかった。/考えていたら、無線電信技術が発達した20世紀の戦争で、独断専行が無益有害であったことに気付いたハズ
5月5日
よく「伝統的日本食は塩分過多」と言われる。それが高血圧の原因とも/現代的解釈では確かにそうなんだろうが、近代までは、あの塩分摂取量が、それなりに合理性があったのでは?/現代人は肉体労働しない。だから発汗量が少なく、塩分が体内に蓄積する。/昔は皆肉体労働してたから、塩分が今の倍必要
また、昔は感染症で命を落としていた。冷蔵庫もない時代、食品を塩漬けして細菌繁殖を抑えることの「メリット」は、塩分過剰摂取で高血圧になる「デメリット」を大幅に上回っていた。/つまり、時代によって望ましい食生活は変化しうる、変化すべき、ということ
先日ツイートしたように、かつては軍隊が独断専行することにはメリットがあった。軍馬や伝書鳩による指令通知を待たずに機動的に攻撃できる。/これも無線通信の時代になったことで、独断専行のメリットはデメリットに変わった。時代によって、制度のメリットはデメリットになる。逆もしかり
最近自分が歴史や昔の小説にハマっているのは、「現代の常識のルーツは、どこから生まれたのか?」をサーチしたいから。ルーツを調べることによって、現代の常識が真っ当なのか、それとも改訂すべきなのか、見えてくる。
例えば、50年前とかに一部の科学者が夢想したアイデアが、当時の技術では『実現できない』とお蔵入りになり、そのまま科学者の中からも忘れ去られているケースもある。/それが、今のIT化・ビッグデータ解析の時代だと、案外あっさりと実現可能になったりする。
だから、40年前、50年前の新聞縮刷版とか、科学雑誌とかを閲覧する行為は、実は「過去のアイデアをサルベージして、今の最新ITビッグデータ技術と組み合わせて、見事に復活を果たせる」という点で、極めてクリエイティブな作業なんだよな。単なる懐古趣味・後ろ向き趣味じゃない。