日本型悪平等起源論 読書メモ

8月10日

昔買って、でもマトモに読まずに実家においていた、島田荘司笠井潔の「日本型悪平等起源論」読書中。対談本は、作者1人の本よりも面白くなる、の見本のような本

この本の発行は1994年だが、まだ当時はお見合いの慣習が生き残っていたんだな。島田荘司が日本式お見合い制度を「男女がセックスアピールを磨かなくても配偶者にありつけるための、極めて日本的悪平等制度」と批判している

島田荘司は、「お見合い制度をなくせば、日本の男女もセックスアピールを磨いて、チャーミングになって面白い日本、良い意味の競争がなされる日本になる」と期待してお見合い制度を批判したのだろう/現実は島田荘司のナナメ上。お見合い制度はなくなり、そのまま非婚化が加速

日本人の「信長好き」にも苦言。桶狭間の戦いは「奇襲戦法」で、弱(織田)が強(今川)を打ち取った/桶狭間の物語が日本人に深く浸透しているが故、日本人には奇襲に対する罪悪感が希薄になったと解説。真珠湾攻撃に対する日本人の鈍感さの遠因になっている、との分析に目ウロコ。

言語学的アプローチも。「日本語を含む太平洋語圏は、母音が強い⇒脳が情緒的になりがち」/子音が強い欧米語圏の方が、冷静に判断できる脳みそになる、との指摘。/こうなってくると、日本語を捨てなきゃならないのか?とも思えて絶望的になる。

「日本人の性格は農耕民族だから粘り強くなった」の俗説にプラスα。「単に農耕民族、というだけではここまで粘り強い性格にならない。アジアモンスーンなタイやインドネシアは、粘り強くない」/両氏によれば「二毛作ができず、台風も地震も来るというハンディがある環境だから、粘り強くなった」

縄文人弥生人に駆逐されたのは「T型白血病ウイルスを貰ってしまったからでは?」と疫学的解説/「この時期に小氷河期を迎えたから仮説も紹介」/自分の認識では、九州の火山が超爆発して、火砕流で九州全滅したからじゃなかったか?

奇襲の話に戻ると、大本営大東亜戦争で作った作戦のうち、実に200もの作戦が「奇襲」だったらしい。奇襲は大本営お家芸/ここまで奇襲が横行すると、敵側は「どうせ日本軍は奇襲で攻めてくる」と手の内読まれちゃうので、奇襲にならない。大半は失敗に終わったとか。

先の「桶狭間のエピソードが国民のコモンセンスになったせいで、日本人は奇襲不意討ちに対する罪悪観念が希薄になった」のエピソードは、逆に言えば「過度の日本史教育は、グローバル化にマイナス」ということにならないか?日本史なんて所詮は極東ローカル史

日本人は桶狭間の成功が一種の「固定観念」になってしまい、奇襲に対する冷静な損得判断ができなくなってた/アメリカ人は、自国の歴史の中の戦争は独立戦争南北戦争程度。国民のコモンセンスになるようなエピソードは発生してない/その分、固定観念に縛られず、客観的に戦争遂行できた

今の国際情勢や戦争について客観的に判断するのに、桶狭間の戦いとか戊辰戦争とか、時代がかった戦争の知識は何の役にも立たない。かえって邪魔/現代戦を学ぶ方がはるかに有意義。湾岸戦争とかユーゴ内戦、少し前のアフガン戦争とかフォークランド紛争とかベトナム戦争とか

第一次大戦を境に、戦争の在り方が変わった。機械化・機動力が決め手になる/それを学ばなかったのが旧日本軍。普仏戦争の時の戦争概念のまま太平洋戦争に突入

「現代における判断材料」として歴史を教材利用するのなら、参考にできるのは直近30年、長く見ても直近50年程度。/極論すれば、日本の義務教育過程において「古代〜中世〜近世〜戦前」迄の義務教育は不要。義務教育は戦後からで十分

まあ「戦前以前の歴史義務教育は不要」は暴論なのは承知ですが/少なくとも、このグローバル世界時代に、日本国内限定コモンセンスを増幅させる「NHK大河ドラマ」はとっとと廃止すべきだろ。官兵衛なんて日本人の常識にしたところで、世界じゃ「誰それ?」な訳で

そもそも「信長」「家康」クラスですら、世界的には「信長、WHO?」「家康、WHO?」な訳でして。唯一秀吉だけは「朝鮮を攻めた男」として有名(悪名)/一方で日本人だと「アレクサンダー大王、WHO?」とか「エカテリーナ女王、WHO?」なレベル。西欧有名人リテラシーが低すぎる

だからNHKがなすべきことは、日本人の「西欧有名人リテラシーの低さを修正するために」、西欧有名人をテーマにした大河ドラマを作るべき。視聴率は取れないかも知れないが、そもそもNHKは視聴率を目指す必要がない

確かNHK大河ドラマは、1984年〜1986年は実験的に歴史モノを止めてたんですよね/しかし1987から歴史モノを復活させた/NHKは「視聴率の為」と説明してるが、多分「大河ドラマの舞台になることで観光客誘致したい地方」が国会議員使ってNHKに圧力掛けたのでは?