野村総研の1988不動産予測本をオモチャにする

1月1日
実家に1988年3月の不動産の本があったから懐かしく読んでる。あの当時、「地価は暴落する」という本が多数出ていて、実際1987秋には一時的に地価は下落してたようだ/一時的に1987ブラックマンデーの影響受けていたのか?

実際は1988から1989にかけて地価は更に上がったけどな/「地価は暴落する」という1988春辺りの「予言の書」が実現したのは1991以降

不敬な投稿だが、1988つまり昭和63年に発刊された本なので、「あと12年後の昭和75年」なんて書いてあって、読みにくい。2005年と書いてくれればいいのに/当時は昭和が75年まで続くと思っていたのか?/でも今でも「平成40年」なんてリアリティーないよね?

計算間違えた。昭和75年は2005年じゃなく2000年だった

竹下内閣の「ふるさと創生」を受けて、野村総研が書いた本を 読んでる/なんか最近似たような話を聞いたような気がするが

で、「郊外に一戸建ての男の城を建てる」な住宅すごろくが昭和75年まで続くようなことを野村総研が書いている訳です。野村総研の分析力を以てしても、「都心化」「タワマン化」は予知出来なかった

1988頃って、そもそも「超高層マンション」そのものがほとんど存在しなかったから、野村総研を責めるのは気の毒か。都内は西戸山程度しかなかった。あとは大阪ベルパークシティと芦屋浜シーサイドタウン

当時の野村総研の人が、狂乱地価を抑える為の提言をいろいろ書いてるが、融資サイドについては何も書いてない。結局地価下落の引き金は不動産融資の総量規制だった訳だが

当時の社会情勢見てると、前川レポートで「エコノミックアニマルで輸出ばかりの日本」から「内需拡大な日本」への構造転換が要求されてる。その文脈で「週休2日制導入」とか「有休の拡大」、その帰結として「リゾート」が語られている/リゾート3セクの死屍累々はしばらく後の話

「バックオフィス・フロントオフィス」という「1988ではナウな造語」を駆使して、YBP・MM21・幕張・埼玉新都心を解説してる点が泣かせる。時代の徒花

1月2日昨日の野村総研の1988著書、日本各地の地域戦略について書いてたが、九州とかが「アジア・中韓との連携」と一切書かれていない。1988当時は「ジャパンアズナンパーワン」で、東アジアがそこまで発展するとは野村総研ですら予想してなかった

こういうシンクタンクの未来予想本は、10年20年寝かしておいて、果たして主張が正しかったか否か検証するのが正しい楽しみ方

また、1988年時点でのマイホーム戦略で、一切「中古」について言及してない点も気になる。中古マンションとかが「市民権」を得たのは90年代以降なんだろうか?/住宅金融公庫でも中古は差別的扱いされてたんだよなあ

自分は人が悪いので、オモチャにしている野村総研本のタイトルを書いておく。「ショック・レポート 日本列島第4次大改造計画 あなたが巻き込まれる大異変」野村総合研究所地域計画研究部主任研究員・山崎一真監修

「日本列島第4次大改造計画」とGoogle先生に尋ねても、殆どヒットしない。この手の未来予想本は、賞味期限が相当短くて、ネット時代まで生き残れなかったことがわかる/下手したら国会図書館だけしか蔵書されてない本かもしれない。まあ中古本屋に出しても10円もしないだろうが

「欧米より200〜500時間長い労働時間は、今後是正を迫られる、週休2日制と相まって、日本の労働時間は昭和75年には欧米並みになる」とは、1988時点の野村総研の有難いご神託。思えば遠くへ来たものだ/野村総研ソ連崩壊・社会党壊滅・労働運動壊滅までは読めなかった

野村総研本108ページ、「大都市の若者の結婚年齢は30歳を越えるだろう」予想は、まあ正しい/ただその予想は「自由時間を謳歌する若者が増え、リゾートが流行る」な文脈に連なっている。「そもそも結婚せずに少子化し、年金負担が重くなってリゾートどころじゃなくなる」となってないのが惜しい

多分、欧米並みの自由時間、掛ける、バブル期の経済成長、イコールリゾート施設の大量不足だったんだろうなあ。野村総研は掛け算能力は優秀だったんだ

野村総研本149ページ、「子供が出来たら、都心部のごみごみしたところは、教育にも健康にも良くない」と郊外への移住を考えるのが主流である、と記載。1988脳の限界を見た/そもそも、250ページにわたる著書の中で「共働き」という単語が一回も出て来なかった点が驚き

1月3日
なんか昨日新幹線こだま号からツイートした「野村総研の1988の不動産未来予想本感想ツイート」が予想外にRTされているな。その本の著者にとっても、「今頃ネット界で注目される」のは予想外の出来事だろう/ネットの世界は、たまに「ネット時代以前のエントリのサルベージ」が起こるから面白い

政治家の本がリアルな政治に影響を与えた例って、田中角栄の「日本列島改造論」と増田大臣の「消滅自治体」の2例が典型な気がする。いずれも地域本

今書店をにぎわせている「2020東京湾岸大改造」な本や「地方創生は今後どうなる?」な本を、ブックオフで数十円で購入し、一回目を通した後、10年後や20年後に再読することをお勧めする。一種のタイムカプセル/カネが勿体ないので、新刊で買わずブックオフで買うべし

野村総研の1988予測本をオモチャにして遊んでいたが、そもそもこの手の予測本で予言的中させた本は殆どない/自分が知っている唯一の予言的中本は、アナリストやシンクタンクじゃなく歴史作家による未来予測。邦光史郎の「10年後」、1983出版

野村総研が1988時点でソ連崩壊を予知出来てなかったのに対し、邦光氏はなんと1983、ゴルバチョフ出現以前の時点で早くも「米ソ冷戦は終結する」と早すぎる予言。当時中学生だった自分には荒唐無稽な予言に見えた。/その後の歴史を見ると、まさに慧眼

本じゃなく放送なのでアーカイブ検証できないのが残念なのが、NHKが1985に放送した「TheDayその日」。「将来日本でも、アメリカ並に未成年出産が横行し、高校に託児所が当たり前になる」というぶっ飛び予想/少子化に苦しんでいる今から見たら、むしろNHK予言通りになった方が良かった

朝日新聞とかの記事データベースで、「少子化」というワードがいつから紙面に現れ始めたのか、研究してみる価値がある。自分の記憶では、1989までは紙面に全く登場していなかった

今オモチャにした「TheDayその日」は、近未来の生活を再現ドラマにしていた。未成年出産の回でも、女子高生がベビーカーで赤ん坊連れてくるドラマを制作/「消滅自治体」「限界集落」も、NHKが大金掛けて近未来ドラマを作ればインパクトあると思うのだが

実際、高校は兎も角、大学には託児所があってもオカシクないと思うのだが。大学に託児所を設ける「必要がない」こと自体が、日本の晩婚化少子化の深刻さを物語る/堺屋太一は「日本とアメリカの出生率の差は、10代と20代前半の出生率の差」とホンネトーク

邦光史郎の本は、数年後には「バブルを予想できなかった」と批判されたらしい/でも数十年のタームで見れば、ソ連崩壊の他、「結婚できない若者が急増」「終身雇用制の崩壊」「銀行数が半減」など、ことごとく予想を的中させている。http://www2.nct9.ne.jp/essyuu-sennin/cono24.htm

つまり、80年代の日本は、野村総研の耳障りのいい予言でなく、邦光史郎の「耳の痛い予言」を直視すべきだったんだろうなあ。バブル発生させて逃げている場合じゃなかった

唯一邦光史郎が外した予想は「東京一極集中が緩和される」の予言。これだけは集中加速にドライブが掛かった/でも、トータルでは8勝2敗程度で、邦光氏の予言が的中していると思う。