DMVの開発失敗理由は標準規格化に敗れたから

2月21日
図書館で借りた「線路にバスを走らせろ」2007朝日新書読破/気になったので現状のDMVの状況調べたら「JR北海道は開発断念」らしい/相次ぐ事故でJR北海道に開発継続体力が無くなったということなんだろうが、ここまでに溜まったノウハウを死蔵させていいのか?

もはや、DMVは一事業者(JR北海道)だけの問題じゃなく、第三セクター等も含めた全地方鉄道共通の課題。JR北海道の開発部隊を鉄道総研がそのまま引き取るなどして、ノウハウの散逸を防いで実用化させるべき

「地方創生」で各自治体に半強制で補助金をバラマキ、予算消化をノルマ化している。その予算の一部でも、DMV開発予算に回して、少しでも早くDMVを実用化させたほうが、よっぽど地域が活性化するんだがなあ

DMVの本を読むと、「幼稚園マイクロバスを見て、マイクロバスの改造を思いついた」が、「マイクロバスを製造する自動車会社」(三菱自動車日野自動車等)に協力を依頼したが、ことごとく断られた、とある。つまり、こういう大メーカーは、『量産車の製造は得意だが、特注品は大の不得意』

これって、いわゆる交通システムの本質を表している。『標準化された交通システム』が、そのまま普及し、標準化に乗れなかったシステムは、そのまま淘汰されてしまう。例えば、名古屋のガイドウェイバスが名古屋以外に拡大しないのは、結局標準システムにまで発展できなかったから

JR各社の、いわゆる客車夜行列車、ブルートレインが急速に減少したのも、『夜行客車というシステムが、標準から離れてしまった』ため。一旦標準システムの座から滑り落ちると、後は加速度的に崩壊してしまう

一旦標準システムから離れると、例えば『夜行列車の為の車両新造は、他の車両製造より量産効果が見込めないから避けよう』となったり、『たった1本の夜行列車のために深夜スタッフを配置は、イレギュラーになるから避けよう』となり、加速度的に崩壊する

逆に言えば、新規にできたシステムを、『標準化』させるのは、強靭な意志なり資金なりが必要。新幹線は国鉄そして田中角栄の『強靭な意志』があったから、標準化に成功した。

『全国新幹線網計画』というのは、いわば新幹線の標準化システムですよ。この大風呂敷が出来たから、その後新幹線は『長距離輸送の標準』の座を獲得できた

第三セクター鉄道レールバスも、あれは富士重工レールバスの標準型を設計してるんですよね。なので、曲がりなりにも今まで存続している

三菱自動車日野自動車が、JR北海道の要請を断ったのは、とどのつまり『DMVが、標準システムになるとは思えなかった』からでしょう/逆に言えば、国土交通省が、『全国DMV網構想』という大風呂敷を広げる必要がある。そうすれば、『標準化しそうだ』と協力者が増え、開発が加速する

2月22日

でも、巨大な資本力JR東日本は、DMVには関心を示さず、BRTにご執心。恐らく『BRTをローカルエリアの標準交通システムに育てたい』な思惑もあるものと思われる

そう考えると、東京の臨海エリアにBRT、な話も、JR東日本の息が掛かった話のようにも思える。首都の、それもオリンピックエリアで、BRTが採用されれば、一気に標準化に弾みがつく

個人的には、湾岸エリアのロープウェイ構想を嚆矢として、都市内ロープウェイ輸送を標準化して欲しいと願ってる。既に基礎技術は固まっているから、後はラッシュ輸送とか強風時対策とかを詰めていけばいい。

DMVの本を読むと、どうもJR北海道は『DMVだけが走行する線』というのをイメージし、それによって保守コストを大幅減することに主眼を置いているようだ。普通車両や特急も走行するような路線にDMVを導入しても、保守コスト減のメリットは出にくい

でも『DMVだけしか走行しない線』って、それはBRTにしちゃえばいいんじゃないの?というツッコミがJR東日本から出そうな気がする/自分のイメージも、『通常型車両も走行し、それなりに鉄道の存在価値があるエリアで』、『さらにDMVが加わってきめ細かいサービスを行う』イメージ

『標準化』という観点では、新交通システム跨座式モノレール懸垂式モノレールって『微妙』だよな。微妙だから、横浜ドリームランドモノレールとか、桃花台交通とかが廃線に追い込まれている。

多分桃花台交通なんかは、場末の3セクよりは輸送量は多かったんじゃないかと思う。にもかかわらず、場末の3セクが生き残り桃花台交通が廃線になるのは、結局新交通システムが『標準なシステムじゃない』から、いろいろとコストが通常鉄道よりかかったのが理由なんじゃないか?

あと、拡張性を考えれば、近接エリアの規格は統一した方がいい。何故多摩都市モノレールは、西武山口線レオライナーと規格統一(つまり、新交通システム化)しなかったのか?

狭軌のレール式・直流1,500V・20m車の鉄道システムが、日本では今のところは『最強の標準システム』なんですよ。なので、極力この標準システムに合うように設計した方がいい。多少輸送需要が低いエリアだと、複線のモノレール作るよりは、単線で地下鉄作って、既存鉄道を相直させた方がいい

地方の民鉄って、結構「大手私鉄と規格を合わせた」ことで、いろいろメリットを享受している。長電とか熊本電鉄とか富山地鉄とか、中古車を首都圏や関西圏から格安譲受してコストを下げている/これが別規格だったら、或は地方民鉄は廃線の憂き目にあったかも

以前テレビでやってたが、「消防車」というのは、量産されたトラックを買ってきて、それをメーカー(モリタ社など)が個々に改造しているんですよね。それまで自分は『モリタ社がエンジンもシャーシも全て作ってる』と思ってたが、とんだ勘違い

だから、DMVの作り方も、『量産マイクロバスを購入し、それを個々に改造する』というのが最安なんだろうなあ。

モノレールは跨座式と懸垂式で『標準化争い』をしてしまったため、どっちも中途半端になって、どっちも普及できなかったという最悪パターン。確か、跨座式が日立で懸垂式が三菱電でしたっけ?

ちなみに、1960年代は『モノレールが未来の鉄道標準形』と信じられていた。姫路のモノレールに至っては、『日本海まで延長』という荒唐無稽な構想まで存在していた。

地方の交流電化って、当時は無煙化を優先するための安価な方式だったんだろうが、標準化という点ではデメリット多し。しかも、50ヘルツと60ヘルツの2種あるので、その点でも標準化からかけ離れ

少なくとも、北陸エリアを交流電化にしたことは『失敗』だったのでは?今頃になって、五月雨で直流電化に変更されたりしてる。