客間/応接間は、どこに消えた?

7月5日
録り貯めしていた「ありえへん世界」で、古美術商の特集していたが、直近、「掛け軸」の価格が「10分の1」に暴落しているらしい。「そもそも、床の間のある住宅がなくなっている」から

夏目漱石「道草」読んでるが、「殺風景を極めたその室の中にはあいにく額も掛物も掛かってなかった」というセリフがある。逆に言えば、当時は大学卒クラスだと、客間があって、かつ掛け軸が掛かっているのが常識であった

戦前において、掛け軸の類は「教養と家柄を客人に表わすアイコン」の役目を果たしていたんだろうな/戦後においても、年号が昭和な間は、田舎の旧家だとそんな感じだった

高度成長後、東京や大阪の郊外に出現した近代住宅の場合、「客間」ではなく「応接間」にとって代わり、掛け軸の代わりに「テーブル&ソファ」「シャンデリア」「洋酒やグラス」そして「ピアノ」がアイコンになった

当時、マイホームを建てたサラリーマンが、わざわざ「応接間」という空間を作ったのは、一体なんだったのか?今と違い、部下を自宅に呼んで、奥さんがごちそうする、という「文化」が根付いていたんだろうな。年始とかに上司の家に挨拶に行ったり/そこに止まってるクルマは、クラウンじゃなきゃダメ

今だと、一部上場企業の部長クラスでも、「部下を自宅に呼んで、応接間でごちそうを振舞うことで、部下にいい顔をする」という文化は、すっかり廃れているよね?/奥さんも共働きになって、主人の部下の相手をすることを嫌がるようになってる

欧米では、アッパーミドルのファミリーが絵画を買う。日本人の数十倍は買うらしい/恐らくそれって、自宅に絵画を飾って、来客者に教養と家柄をひけらかすためだろうな/日本は先進国で唯一、「自宅に客を招かない社会」に変質した

現代のマンションとか、プラウドシーズンな建売に存在するのは、「リビング(居間)」であって、「客間」や「応接間」ではない。せいぜい、田舎の親が上京してきた際の宿泊スペースとしての「和室」程度しか、用意されていない

ドラえもんを見ていると、よくのび太のパパが会社や取引先の人を連れてくる。たまには社長も来る/サザエさんでも、よく来客が来る。つまり、この2つのマンガは「昭和」なんです/妖怪ウォッチは、父親の会社関係の来客が来るシーンはゼロ。その意味で、妖怪ウォッチは平成のマンガ。

今だと、「家に客が来る」というのは、「子供が同級生を連れてきた」みたいなシーン程度だからなあ。そこで求められているのは、厳めしい応接間じゃなく、くつろげるリビングな訳です

テレビ朝日の「建もの探訪」を毎回録画して見ているが、殆どの家で「リビング」が有るのに対して、「応接間」を用意している家は、自分の記憶の範囲内では存在していない

恐らく、21世紀生まれな子供が昭和の小説を読んだら、「応接間で云々」というシーンで「???」を連発することになるんだろうな/ウチの子供の場合、妻の実家に「応接間」があるから、それで理解できるんだろうケド

昭和50年代のマンションのモデルルームでは、ちゃんと「応接間」をこしらえていたのだろうか?ソファにテーブルにシャンデリアにピアノが、所狭しと並んでいたのか?

でも、住宅展示場のモデルハウス、延床60坪な『ありえへん家』だと、ちゃんと応接間とか客間がある気もする。積水ハウス三井ホームは応接間を用意し、住友林業は客間を用意する

7月6日

注文住宅のモデルハウス、60坪のありえへん家に「応接間」があるのは、「応接間のある生活の提案」というより、「応接間で、営業マンが客に商談するため」というハウスメーカー側の事情の為なんだろうな/マンションのモデルルームだと、別に商談コーナーがあるから、応接間の用意が不用

ところで、妖怪ウォッチのケータの父親と、マドンナ役のフミちゃんの父親は、「同じ会社に勤務」という設定らしい/子供の同級生の親が、同じ会社って、なんかイヤだなあ・・・/社宅族だと、同じ社宅から同じクラスに通う子がいるのはわかるケド、一戸建てでそれって、珍しくないか?

社員が東京40キロ圏に分散居住している東京都心の企業だと、「公立小学校に、同じ職場の父親2人の子供2人が、同じクラスになる」という不幸な確率は、限りなくゼロに近い。やはり妖怪ウォッチは、そういう確率が高まるような地方都市、例えばレベルファイブ本社がある福岡市が舞台なんだろう

実際、妖怪ウォッチで登場する川のある風景は、なんとなく福岡の室見川辺りを彷彿させる。あの辺にちょっと住んでいたからわかる。

この前、下の子が見てた『クレヨンしんちゃん・ロボ父ちゃんの巻』を見てたが、街並みの中に山があるシーンがあるので、「関東平野のど真ん中なカスカベに、山がある訳ないじゃん」とツッコミを入れていた/練馬辺りが舞台と言われてるドラえもんにも、裏山があるんだよな。なんか不自然

ドラえもんのあの裏山、あれはむしろ川崎市辺りの光景だと思うんだ・・・