通勤手当廃止論の前にすべきこと

http://twilog.org/shinjukujiro/month-1501/allasc-4

1月12日
戦前の通勤定期の歴史を調べればわかるよ。戦前は2等定期券が3等定期より先に出来た。つまり電車通勤はホワイトカラー(エリート)の特権で、ブルーカラーは工場徒歩圏の劣悪住宅に固まって住まざるを得なかった / “Chikirinの日記:…” http://htn.to/yFMjSbM

ラッシュ時以外の利用(早朝利用)にポイント付与することでオフピーク誘導するのは、既に田園都市線でやっている筈/株主優待と一緒で、こういうのは企業横一線の慣習。なかなかなくならない / “通勤手当を廃止したらどうなる?高速道路を無料…” http://htn.to/fjaF7C

ちきりん氏の「通勤定期廃止論」だが、通勤定期代と家賃負担(ローン負担額)でトレードオフのような議論をしているが、実際には定期代:ローン代=5:1程度だろうから、廃止したところで都心移住効果はごくわずかだろうな。/在宅勤務は普及するかもしれないが。

通勤定期負担が月2万円もするような場所に居住している人に対しては、在宅勤務キットを補助して配布した方が、企業のトータルコストは下がると思う。なぜちきりん氏は、そっちの方へ議論誘導しなかったのか?

実際、郊外住宅地にマイホームを構えた団塊世代が、退職して「都心までの交通費を自腹負担になってしまった」時に、初めて「交通費の高さを実感する」的な話も散発している。自腹で昼間格安回数券を買ったり、チケット屋で回数券買うシニアも多い

明治時代の私鉄は砂利運搬とか初詣輸送が主力で、通勤輸送は殆ど無かった、と説明しても、ちきりん氏には理解してもらえないんだろうなあ/本業が電力供給、副業が電鉄輸送なんて会社も多かった

「通勤定期代支給」というのは都内事務所勤務者の文化/例えば外回り営業が多い職場なんかだと、自家用車の持ち込みについて、どう通勤定期制度と整合取るか、苦労している

これは推測だが、通勤定期手当が大半の企業に普及した一因に「戦時中の、銃後の国民の工場勤労動員」があったんじゃないかと思う。労働者に勤労を国が命じるため、その通勤手段を確保してあげたのでは?/例えば中野居住の市民を三鷹の中島航空機勤労を命じる際に、通勤定期手当を支給

仮に自説が正しければ、堺屋太一が規定する「1940年体制」(戦時体制)の残渣が通勤手当制度ということになる。その意味では、ちきりん氏の指摘は的外れじゃない。

「通学定期を通勤定期より割り引く」って、よく考えたら合理性のない制度だよな。株主代表訴訟で訴えられるかもしれない。

通学定期の割引を「企業の社会的責任」ということで株主に説明するつもりなら、「グリーン車の妊婦乳児連れ利用割引」の方が、はるかに社会的に重要だと思うんだけどなあ。

ちきりん氏の指摘は、「公共交通の割引制度、手当制度を、ゼロリセットで再設計すべき」という問題に置き換えたら、それはそれで問題提起の意義はある。/少なくとも、朝ラッシュ時の運賃・定期代を引き上げるのが合理的で、Suica普及で時間別課金はしやすくなっている。

i‐ビーコンシステムを発展させれば、「混雑する快速電車にはSuicaからプラス10円の課金を、空いている各駅停車利用の場合には、Suicaに10円の割引を」のような利用電車毎課金をすることも、不可能じゃないのでは?

例えば、現状150円程度掛かっている山手線運賃を、一旦300円に値上げし、その上で「Suica決済なら20円引き」「空いている9号車利用なら更に30円引き」「6号車に乗車して、そこで配信されるアンケートに回答すればさらに20円引き」のようなきめ細かい割引を組み合わせるのはいかが?

六本木ヒルズって、今や巨大な集客装置、メディアの場で、森ビルは広告の場としてヒルズを売っている/それと同じで、山手線車内をメディアの場と考え、そこにアプリ配信して、対価として運賃割引というモデルが成立するのでは?

こういう乗客ターゲティング広告と親和性が一番高いのは不動産広告だったりする訳で、「京王線利用者に一律車内アンケート配信し、回答者にポイント付与する」みたいなことを京王沿線のマンション現場が仕掛ける、なんてことも考えられる。

そう考えると、鉄道会社系の不動産会社が一番有利なポジショニングに位置する訳だ。顧客個々の平日・休日の利用状況も、提供アプリ次第で把握可能。

グリーン車利用な人は、「有意な確率で、カネを持っているだろう」ということで、億ション情報を配信したり、「快速電車利用者は、忙しい人が多いだろう」ということで、そういう広告を配信したりすることもできる

スマホ定期で、「仙川駅でのチェックイン・チェックアウトが多い人」は、多分「現住所が仙川駅」か、「勤務先が仙川駅」な訳で、そういうスマホに「仙川駅徒歩圏マンション」の情報を飛ばすのが一番効率的。

ちきりん氏も、「通勤手当の廃止」なんて「誰でも思いつく」ような提案をせずに、「スマホ定期券を使ったスマートシステム」辺りを提案してほしかった。一応はコンサル出身なんだから。

例えば、秋田新幹線「こまち」車内で、「普段は都内駅のチェックインが多いスマホ」が確認されれば、それは「秋田への観光客か、ビジネス客のスマホ」な訳です。そういうスマホへ、秋田の観光情報とか、「秋田観光への不満点のアンケート」を配信すれば、よりスマートに観光活性化できる

そう考えると、首都圏と地方(東北)の双方を押さえているJR東日本最強な訳です/首都圏のJR使ってると、首都圏と東北・信越以外の観光情報は皆無だからなあ。中四国九州は、日本に存在していない錯覚を覚える。

この前青森県庁の知人と会った際に、「どうすれば青森県が活性化されるか?」と相談を受けた/即座に「JR東日本と組めばいい。JR東日本としては、東京〜青森の流動が増えることが、一番自社管内での儲けになるから」と回答したら、ものすごく納得していた