相続人は被相続人の株式ポートフォリオをリセットする

11月28日
「タワマン節税に規制」という話もあるが、一方で「株式を相続した場合に、株価の時価100%評価じゃなく、80%とか70%とか、ディスカウント評価する」という相続税制の改革も検討されてるらしい/「相続税対策の王道は不動産」じゃなくなる?

というのは、「個人が株式を現金化するキッカケ」として「子供が死んだ親の株式を相続し、それを現金化する」というのが、かなりの割合で存在するからだとか。「相続の半分の事例で、相続人は株式の現金化をしている」らしい

子供からすれば、「うちのオヤジが、なんか知らん会社の株式持ってるみたいだな。よく判らんから、現金化しよう」という感覚だろう

相続財産が不動産だったら、現金化も結構ハードル高いから、そのまま持ち続けたりしてる

相続税の支払の為に、現金化が容易な株式から現金化される、という側面も、ある

ん?「株式の相続税評価額を時価から割り引く」ことは、「子供が相続株式を換金売りすることを、防ぐ政策」に、なるのか?別に評価額が割り引かれても、子供からすれば「ごっつあんです」というだけで、そのまま換金売りするんじゃないかな?

まあ、親の世代が「今まで相続税対策の為に、欲しくもないタワマンを買ってた」のが「相続税対策の為に株式を買う」から「株価の下支えになる、アベノミクスになる」という効果はあるんだろうな。但し、10年後、実際に親が死んだ際に子供は換金売りするんだろうけど

「預貯金から、投資へ」と叫ばれてるが、その投資財産(株式)が、世代交替する際に継承されない、という問題は、証券関係者はあまり深く考えてなかったのでは?/実際、自分は親がどこの株式持ってるか知らないし、知ったところで愛着も、ない

本来なら80歳の親が「こういう理由で、自分はトヨタ株500万、キャノン株300万、ソフトバンク株400万長期保有している」という「投資先選定の、ココロ」を、50歳な子供に伝承して、相続発生の際には、子供は親の遺志を尊重して、トヨタもキャノンもソフバンも現金化しない、があるべき姿?

企業の株主向けのIRって、今までは「自分の意思で投資先を選定する人向け」がメーンだが、今後は「自分の意思じゃなく、親が勝手に投資してたのを、相続継承した」という「受け身な株主」に対するIRも、重要になってくるのではないか?

日本の上場株式は、その大半は機関投資家とか持ち合い株とか、あと外資が持ってたりするが、数少ない個人投資家持ち分の大半は60歳以上の老人が持ってる訳で。IRとか、経営判断も、株主様である老人を意識したものになる

逆に言えば、「何故日本でベンチャーとか革新ビジネスが産まれないか?」というのは、「株式投資できる資力があるのが60歳以上のシニアが大半で、彼らがこれら革新ビジネスを理解できないから」という理由が大きいのでは?70歳の個人投資家フェイスブックは理解できない

その点、日本郵政なんかは老人にも「判りやすい」。株主に気に入られてるから、株価の安定は約束されてる。

なんだかんだで、中国の個人投資家の主力は、40歳代とか50歳代の富裕層。まだ革新ビジネスを理解できる年齢。だから、まだ中国の方が、革新ベンチャーは産まれやすい、資金供給されやすい

今思えば、ソニーとかホンダとかが成長した昭和30年代は、まだ日本の平均寿命が60歳程度の時代。つまり、カネ持ってる個人投資家の年齢もせいぜい50歳代だから、ソニーとかホンダに投資できる「若さ」があった

サラリーマン小金持ち70歳シニアの株式ポートフォリオって、考え抜いた末のベストポートフォリオじゃなく「○村證券にハメ込まれた」ポートフォリオだったりする/ならば、相続を受けた子供が、ポートフォリオガラガラポンしても、責められないなあ、、

というか、70歳とか80歳の老人にとってのベストポートフォリオと、50歳の人のベストポートフォリオは違っていて当たり前。50歳の人は、80歳の親から株式相続を受けたら、まずはポートフォリオを50歳向けに「再最適化」すべき

だから、日本のベンチャー企業は、資金調達先としては、「親から昭和時代なポートフォリオな株式相続を受けた40歳代50歳代」に対して、「相続したNTT株なんか売却して、我が社に投資しませんか?」とIRすべきなんだろうな

そう考えると、「未成年NISA」というのは、案外面白い政策なのかもしれない。親が未成年のうちにNISAで500万円程度貯めてくれていたら、社会人になった時点で(20代のうちに)資金をリバランスして、ベンチャーの方に投資を振り向けるかも

判りやすくいえば、親が子供が10歳の時点で日本郵政に500万円NISAして、子供が成人したら「日本郵政なんて面白みのない株式は、現金化しちゃえ!」ということで、現金化して新たにサイバーダインとかに投資したり、とか。

「株式相続による、世代毎の投資ポートフォリオチェンジの影響」って、どのエコノミストも、研究してないのかな?/仮説だが、NTT株なんかは、上場時(1987)にゲットした個人投資家が鬼籍に入り始める2020年頃から、徐々に子世代による現金化売りの影響で、株価が下がっていくと思う

まさに自分の世代が「子世代」な訳でして。仮に自分の親がNTT株持っていて、自分がそれを相続したとして、多分自分は即換金売りしそうだな

あと、親が社員持ち株会に入っていて、自分の勤務先の株式を単元株以上持ってるケース。この場合、子供はそれなりに「親の勤めていた会社」については、予備知識もあれば、多少は親しみもあるから、親勤務先株を相続取得しても、あんまり現金化せずに、継続保有する?

相続人が複数人いる場合、「分け前を平等にする作業の都合で」株式を売却せざるを得なかったりとか。

アベノミクスの「通信簿」として世間が注目してる対象は、GDPであり賃金であり、そして日経平均株価である。間違っても、都内のタワマン価格は、アベノミクスの通信簿としては機能してない

ということは、安倍政権としては「なんとかして、株価を上げたい」というインセンティブはあるが、「なんとかして、タワマンの価格を上げたい」なインセンティブは、ない。「タワマンの価格は下がってもいいから、日経平均の方を上げたい、そっちの方が通信簿だから」とすら思ってる

だから、「相続資産を株式保有したら、相続評価額を下げる」というカンフル剤を注射することで、株価を上げることも厭わないだろうな。その見返りとしての「タワマン節税封じ」なのかもしれない

相続税制をいじるだけで、結構世の中の課題が解決できそうな気がする。例えば「地方物件投資、或いは地方本社な企業に投資したら、その相続税評価額は半減させます」なんて税制作ったら、今までタワマンに向かってた相続マネーが、地方創生の方へ向かうのは間違いない

相続税制で少子化対策とか。「お見合い成功させた世話好きじいさんばあさんは、相続税軽減」なんて税制作れば、相続税が心配なシニアは、必死になって、自身の人脈を駆使して、若いモンのお見合い世話焼きに奔走する

今の相続税制は完全に世の中にマイナスの影響与えてる訳で。「空き家800万戸」のうち400万戸程度は、相続税制が不動産にバイアス掛かってた悪影響に起因するのでは?