メモ・外資系不動産投資家座談会

2015年11月12日 不動産ソリューションフェア
「外国人投資家パネルディスカッション さまざまな戦略で日本不動産に投資する外資
司会:トランスパシフィックエンタープライズ
    代表取締役会長 J・マイケル・オーエン氏
パネリスト:
1.グリーン・オーク社 共同創業者 フレッド・シュミット氏
2.AIPヘルスケアジャパン代表 エイ・バリー・ハーシュフェルド・ジュニア氏
3.パシフィカ・キャピタル 代表取締役 セス・サルキン氏
4.タッチストーン・キャピタル・マネジメント 代表取締役社長兼CEO フレッド・ウルマ氏
(全員、日本語が達者。「この5人で、日本投資歴合計100年以上」とのこと)


1.なぜ日本に投資するのか?具体的投資対象は何か?
★タッチストーン・キャピタル フレッド・ウルマ
 ・主にドイツの投資家を抱えている。
  ドイツ版農林中金とか。不動産だけでも4兆円を世界23カ国で運用。
 ・彼らはルールに厳しい。
  法律がしっかりしていて、透明性もある市場でないとダメ。
 ・最初は、12〜13年前、「こわごわと」日本の不動産投資に参入。
  リーマンショックも体験したが、長期でホールドし続けている。
 ・ヨーロッパは先行き不透明
  ⇒(ユーロ以外にも)ドル&アジア太平洋へ分散投資したい。
  となると、アジア太平洋では、具体的にはオーストラリアと日本になる。
  4兆円もあるので、東京市場の規模は気になる。分散の力学。

★グリーン・オーク社 フレッド・シュミット
 ・東京市場:市場規模が莫大。ニューヨーク市場の「倍」。ロンドンの4倍
 ・東京:銀行調達が世界で一番安い。
  従って、レバレッジを掛けやすい。レバを掛ければ利回りが倍になる。
 ・2〜3年先には、大量の年金等の資金が東京市場流入見込まれる⇒値上がり必至
 かんぽ資金、郵貯資金、GPIF。
 PFA(企業年金連合会)で100兆円。地銀も100兆円。
 これらマネーが、徐々に運用されていくのは間違いない。

★AIPヘルスケア エイ・バリー・ハーシュフェルド
 ・日本のシニア・ヘルスケアに特化して投資している。
 ・世界的に見ても、日本は65歳以上の人口比率世界一。
 ・日本の団塊世代以降は金をもっている→シニア施設への賃料負担力高い
 ・日本のヘルスケア制度は、素晴らしい
 ・日本人は長生きで、健康意識も高い
 ・2000年まで、日本はヘルスケア市場に民間が参入できなかった
  ⇒制度改革で入れるようになった。
  まだまだ未熟な市場だが、今後広がっていくだろう。

★パシフィカ・キャピタル セス・サルキン
 ・元は商業メーンだった
  →「日本の商業は既に飽和し、今後ニーズない」。年を取ると物を買わなくなる。
  よって商業には投資していない。
 ・一方でインバウンドの影響でホテルの稼動率は90%で不足している。
  しかし法規制の障壁が山ほどあり、簡単に供給できない。(供給過剰リスクが少ない)
  ⇒ホテル開発に参入。古ビルをコンバージョンしたり。

2.投資したくないセクターは?(意地悪質問)
★パシフィカ・キャピタル セス・サルキン
 ・量販店は投資しない。特に地方は×。
 ・司会:「貴社はホテルに積極的だが、全てのホテルが○か?」
  「競争が激しいところのビジネスホテルは良くない」。ビジネスホテルは差別化が難しい

★グリーン・オーク社 フレッド・シュミット
 ・価格次第でどこでも買う。我々はハゲタカだから。

★AIPヘルスケア エイ・バリー・ハーシュフェルド
 ・ヘルスケアはオペレーション次第。「悪質」「情報開示しない」運営会社の案件には投資しない。

★タッチストーン・キャピタル フレッド・ウルマ
 ・長期投資としては、ロジスティックには投資しない。賃料が20年間一定で、上がらないから。
  「eコマースの拡大で、宅配需要が拡大する」と言っても、「物流の床が増える」とは思えない。
  日本人は、「床を増やさず、作業効率を倍にして、対処してしまう」のでは?倍の床はイラナイ。

3.投資エリアは?東京だけか?
★グリーン・オーク社 フレッド・シュミット
 ・「地方が投資不適格だから」という理由じゃなく、
  単純に「弊社のマンパワーが足りないから」東京しか出来ない。出来てもせいぜい大阪止まり。
  司会「それは世界標準の物件レポートを、地方では作れないからか?」
  「というより『単純に自分が地方に行きたくないだけ』という理由もある」

★タッチストーン・キャピタル フレッド・ウルマ
 ・東京以外だと、次が福岡、次が大阪、札幌。
  名古屋は観光が伸びないから×、福岡は韓国、中国、台湾があるから○。
 ・東京は(前回五輪以来久しぶりに)政官民が同じ方向を向いていて、
 2020年にはピッカピカな街になる。○。
 ・「福岡で、具体的に投資できるモノはあるか?」
  ⇒「オーナー側が、売りたがらないから、買えない」

★ただ、日本人はまだ外人に慣れてない。外人の扱い方をまだ理解していない。
 外人には丁寧だが、フレンドリーではない。これがフレンドリーになれれば、スゴいんだが。
 日本の大手有名ホテルでも、外資系ホテルとはサービスの質が全く違う。
 大手と言えども、まだ外人慣れしていない。

4.人口減の影響は?
★パシフィカ・キャピタル セス・サルキン
 ・大きい問題。だから商業の投資は止めた。
 インバウンド以外死んでいる。インバウンドが来ないような地方の商業は×。

★グリーン・オーク社 フレッド・シュミット
 ・(日本の地方より)アメリカの地方はもっと死んでいる。
  日本の地方は、まだ電車でたどり着けるからマシ。アメリカはクルマがないとたどり着けない。
 ・ヨーロッパも人口は減っている
  日本も(ヨーロッパのように)移民受け入れなければ人口厳しいが、移民は受け入れたくない・・・

★タッチストーン・キャピタル フレッド・ウルマ
 ・確かに労働人口は減るが、他方、今の世代って、親の世代の5倍は使っている筈。
  消費力は減らないのでは?
 ・ドイツから見ると、「規制改革が進まない日本」というのが、一番恐れている。
 ・海外経済紙が日本の政策の通信簿を付けたが、移民政策については「D評価」

★AIPヘルスケア エイ・バリー・ハーシュフェルド
 ・労働人口減で工事労働力が減少。建築費の上昇につながり、シニア施設の建築にも影響。
  (労働力減が無ければ)もっとシニア施設を建てれたのに・・・
 ・人口は減るが、「どこにフォーカス出来るか?」次第。フォーカス次第で商機あり。

5.「次のダウン」は何が契機になる?
★司会「この質問は、常に日本人に質問される」
 「人口減の影響は?」「地震は?」と並んで、3大質問。

★パシフィカ・キャピタル セス・サルキン
 ・消費税率10%引き上げは確かに影響大きい。
  だが、既に「目に見えてる出来事」だから、まだマシ。
 ・それよりは「予測できない」戦争、地震、ウイルス・・・といったものの方が怖い。

★タッチストーン・キャピタル フレッド・ウルマ
 ・世界でここまで問題が山積しているのは、明治以降の歴史で最大なのでは?
  世界がG7→G20と多極化してしまい、民族問題、ISIS、ロシア、中国と問題山積。
  加えて、世界がグローバル化感染症グローバル化。日本も無縁でいられない。
 ・日本の市況:消費税でもひっくり返らない。五輪でも変わらない。
  だが、世界的異変だと、ひっくり返ってしまう。

★AIPヘルスケア エイ・バリー・ハーシュフェルド
 ・日本国債潜在的リスク。既にGDP比200%。どこかで金利Upのリスク
  今のところ買い手が国内だから償還出来ているが・・
 ・三本の矢に期待。規制改革、VISA緩和とか。

★グリーン・オーク社 フレッド・シュミット
 ・知らない、わからない。それが判ったら金持ちになれます。

6.その他
★日本はインバウンドに頼らないとやっていけない国になってしまった。
 安倍さんが失言すると中国人観光客が減り、炊飯器が売れなくなる。

★拡大する中国に、いかに対抗するか?

★まともな大統領候補が居なくなったアメリカと組まざるを得ない日本。
 自分はトランプが大統領になったら、アメリカを捨てる。そう思ってるアメリカ人は多い。

★(司会の「東京以外に投資しないのか?」の問いかけに)
  東京は安心安全な街。アート、エンタメ、政府、金融の中心機能が集まってる。
  ロンドンやパリもそうだが、そこまで集積するのに数百年掛かる。
 ・司会が反論。
  僕は米西海岸出身だから、ニューヨーク、東海岸なんてイラナイと思ってる。
  自分は地方活性化の内閣府委員もやってる。日本の地方の将来は明るい筈。
  ソフトバンクが例えば名古屋辺りに移転すれば、一気に地方は活性化する。
 ・日本の野菜は世界一。
  ⇒ワーキングホリデービザで、日本の農村に農村研修で来てもらい、それに対して
  「グリーンハウスReit」を組成する、という地方活性化策も考えられる筈。

★ウルマ氏:日本の品質は高い。ごはんも美味しい。
 (東京のイタリア料理は、イタリアより旨い)
 他方、給与が「将来下げづらい、クビ切りづらい」という理由で、逆に上げれなかったりする社会。
 保守的。
 ・東京で300円台で牛丼が食べれるのは、ある意味ヤバい。
  ニューヨークの一風堂は、美味しくもないのに高い。

★サルキン氏:日本の地方は、観光以外に成長要因がない。大阪も同じ。
 未だにグランフロントの稼働率は8割。

★バリー氏:日本の高齢化問題は、逆に見れば「チャンス」。
  今後、高齢化問題でアメリカも中国も苦しむ。そうした国に「輸出」出来る。
 ・いま生まれた人は120歳まで生きるだろう。しかしアルツハイマーは残る。
  ヘルスケアの投資の観点では○
 ・アップルの技術は日本のもの。なんで日本がやらないのか?チャンスはある。

★インバウンドや移民は行き過ぎるとリスクがある。エアビーもやるべきではない。
 治安も悪くなるし、建物傷付ける。

★フレッド・シュミット氏:
 SクラスAクラスのオフィスが「多すぎる」。作りすぎ。テナント集まらず、収益低下、株価低下が心配。
 デベはその辺、よく考えてほしい。

★バリー氏:日本人は「バブル崩壊の悪しき記憶」を長期記憶し過ぎ。
 海外で投資案件のロードショーを開くと、
 「なぜ、そんないい案件なのに、日本人自身が投資しないのか?」と聞かれることがある。

★サルキン氏:自分は観光関連は楽観視している。今後5〜10年は成長する。

★ウルマ氏:日本人の応用能力はすごいが、固定観念が強すぎる。
 我々が入社した頃は、机の上で食事をするのは禁止だった(=固定観念)が、
 いま禁止のところは無い。
 ・他国では、「そこそこのレベルのビル」であっても「ホテルライクなサービス」が備わってたりする。
  今後の日本のオフォスも、付加価値付けるべき。
  例:靴磨きがオフィスの中を回って、従業員の靴を磨く
  例:プライベートな予約なども代わりにやってくれるオフィスコンシェルジュ
 ・その手のサービスを24時間行うことで、24時間眠らない街になる。労働人口も増える。
  先進国のオフィスなら、24時間床を磨いているのが当たり前。

★外国のように、日本も「AM」「PM」「BM」「FM」と役割分化させるのが、果たして正しいのか?
 何もかも外国のスキームを取り入れればいい、というものではない。日本流の良さもある筈。

★財界の顔ぶれも、エコノミストの顔ぶれも、日本は20年前と大差ないのが、気になる。
 せいぜい三木谷さんが加わった程度。
 アメリカとは全然違う。
 こんなことでは、新しいリーダーは生まれない。

★司会:「ここにいるメンバーは、皆日本大好きな、日本のチアリーダー
 「3・11直後の日本」に対して、積極的に応援したのが彼ら。
 外資が(震災後でも)ちゃんと日本に来た。
 ・司会:日本の田舎を散歩していて、最近は別の外人とすれ違うことも増えた。
  以前はそんなことなかったのに。
 ⇒「どういう表情ですれ違えばいいのか?」、ちょっと困ったりする。
 ・「寿司屋は、ずっと日本人の板前であってほしい」と自分は思ってたりする。